星の結びかた (ページ17)

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凪ぐ海、ふたりはたしかめあうページ17

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「海行きたいね」

ぼそりとそうつぶやくと、髙比良は突然何を言い出すんだこの子は、といった表情でわたしを見た。

「え、いつ？」
「いま」
「いや、Aさん、いま夜だけど」
「うん」
「冬だし。さむいよ？」
「冬の夜の海に行きたいの」
「あなたねえ……」

そんな詩的なこと言われてもね、困るし、と言いながらも上着を羽織りだす彼はやっぱりわたしのことを憎めないようだった。ふたり玄関を出て、車に乗りこむ。恋人とのはじめてのドライブが夜の海だなんてなんだかロマンチックだなあ、なんてぼんやり考えたりした。車内から見える東京のネオンの明かりは案外悪くなかった。

「髙比良はさ、」
「うん？」
「なんでわたしを選んだの」
「ええ、なに、さっきからどうしたの、急に」
「だってほら、わたし、こうやってすぐ髙比良のこと振りまわすし、面倒な性格だし、とくべつかわいくもないし」
「いや、まあ、いつも振りまわされてるし面倒な性格なのは否めないけどさ。かわいいよ、あなたは」
「どこが？」
「顔もそうだし、そうやってなんで俺があなたを選んだのか聞いてくるくらい、実は自分に自信がないとことか」
「……そうかな」
「そうだよ、」

運転している横顔を見ながら、すきだなあ、と思う。いつもわがままを言ってわたしが彼を振りまわしているように見えて、ほんとうに振りまわされているのはわたしのほうなのかもしれない。いつだって彼はわたしの欲しい言葉をくれるし、わたしの言うことをなんだかんだ聞いてくれる。そういうところが好きで、大切で。

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