+94~過去編~+ ページ5
俺が14歳、百合亜が13歳の頃。まだ純粋だった百合亜に、俺は大きな花火を見せたくて、夜に家を出た。親は勉強やら習い事に厳しくて、なかなか百合亜を遊ばせてくれなかった。
俺は、両親からは期待されなかった。百合亜と違って、頭が悪いからだ。そのかわり、運動だけは人一倍にできた。でも両親はテストの成績が大事で、頭の良い百合亜に両親は期待した。
毎日勉強漬けの百合亜に、俺は息抜きをさせてあげようと考え、花火を見に行こうと誘った。百合亜は喜んで行くと言った。夜、両親が寝たことを確認し、こっそり家を出た。
「お兄ちゃん、綺麗だね!すご〜い!」
公園から見える、空に打ち上げられた大きな花火を見て、感動したように言った。喜んでくれたみたいでよかった。
楽しい時間もつかの間。これから悪夢が来ることも、純粋な俺らはまだ知らなかった。
「百合亜、そろそろ帰るぞ」
花火がうち上がらなくなり、終わったことがわかった。公園を出ようとすると、黒い服を着た中年の男が立っていた。
「ぼくちゃんたちぃ〜、こんな時間に外出歩いちゃダメだろう〜??へへへ…」
お兄ちゃん…、と横から百合亜の震える声が聞こえる。怖がるのも無理もない。安心させるように、百合亜の手を握る。
すると男は、俺らの顔を珍しい物でも見るかのようにジロジロ見てきた。ギロリと睨むと、男はニヤリと笑うと近付いてきた。
「君たち、綺麗な顔してるねぇ〜。もう夜遅いし、おじさんの家に泊まるかい?最新のゲームもあるんだよ〜」
男の言葉を無視し続け、走って逃げようとした時、男が百合亜の腕をとっさに掴んだ。
「きゃあっ、や…、やだ…離して!」
「ふへへへ。こんな上玉逃がすわけないだろう?お前ら二人、売りさばいてやるよぉ…」
近所のおじさんから、教えてもらった護身術を思いだし、相手の急所に蹴りを入れた。男は苦しそうに、しゃがみこんだ。
「ぐっ、あ”あ”…、っぁ…い”ってぇ」
「百合亜、今のうちに…」
百合亜の手を握り、走ろうとした時、俺の右腕と左足に刃物が切りつけられた。痛みに顔を歪める。手足に全然力が入らず、動けなくなった。
逃げろ、と百合亜に言うと、百合亜は公園から出ようとした。すると男は俺の血がついた刃物を百合亜に向かってふりかざした。その時だけ、男の動きがスローモーションに見え、やけに時間が経つのが長く感じた。
そして、百合亜は背中を切りつけられた。
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オタク(プロフ) - 結局ゆりあとはどうなったんだw 女王と猫くんのピアスの話も完結がぱっとしないし…。 (2019年1月21日 9時) (レス) id: 4494596138 (このIDを非表示/違反報告)
マヨいちご(プロフ) - え、ちょ、ちょちょっとリクいいですか(挙動不審)あの、総長にチェシャ君の、なんか…こう、御初()を奪われて欲しいです()出来ればお願いします!!(スライディング土下座) (2018年1月15日 21時) (レス) id: 107876932a (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - とてもおもしろくて素敵でした!読んでいて楽しかったです。あと一つ質問なのですが妹ちゃんはどうなったのですか? (2017年12月14日 17時) (レス) id: ce8ba9399b (このIDを非表示/違反報告)
珈世 - 女王,あんま出てこんかったな(´・ω・`)w (2017年4月6日 18時) (レス) id: 8038c86eb0 (このIDを非表示/違反報告)
aa. - うわぁ!!もう面白すぎ、かっこよすぎて、読みやすくて、一気に読んじゃまいましたよ!!?更新の方はもうしないんですか?久しぶりに良い作品にたどり着けました!! (2016年7月17日 16時) (レス) id: d4e903947b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くるくる | 作成日時:2014年7月19日 18時