俺の彼女は努力家です。【そらる】 (ページ9)

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No.9 ページ9

Aside

欲張りになっちゃたって言ったら不思議そうな顔をするまふくん

ぬいぐるみをもふもふしていたまふくんの手が止まる

「Aちゃんが？」

首をかしげるまふくんに頷く

彼はいまいちピンと来ないという顔をしている

『時々ねいつもより少し、いい評価がくるの。とても嬉しくて舞い上がっちゃうけど、気づいたらそれが最低限のことになってるの』

最低限の、越えて当たり前ってラインに

『そしたらもう、それ以上の評価を貰えないと満足しないの』

これはほんとに最近感じ始めたこと

気づいた瞬間、恥ずかしくなった

なんて強欲なんだって思った

だってそうでしょ？

評価してくれる人がいるのにそれを当たり前だなんて思ってたんだよ？

そんなのってダメだよ

当たり前だなんて思っちゃいけないんだよ

「Aちゃんは……砂漠を歩いてるみたいだね」

僕と一緒、とはにかんでまふくんはそう言った

「砂漠で水を飲んで歩くけど、足りなくてもっともっとって望んで……いつまでも満たされない……」

僕と一緒だよ、もう一度そう言ったまふくんは優しい顔をしていた

『まふくんもそうなの？』

「そうだよ？こんなんじゃダメだ、もっと突き詰めれば、なんてしょっちゅう思ってるよ」

思ったようにいかなくて喉が渇くこともある

意外なまふくんの一面を聞いた

なにをするにも努力家なまふくんも飢えるときがあるんだ

『そんなときはどうするの？』

「奇声をあげる」

『え？』

予想の斜め上を行った解答に思わずすっとんきょんな声がでた

それを聞いたまふくんがププッと笑う

「うそ、ほんとはそらるさんの優しさに甘えてる」

あぁなるほど……私と一緒か……

どうやら私たちは思った以上に似た者同士だったみたい

私も息がつまったときはそらるさんに甘えてる

「でもね、Aちゃん」

真っ直ぐに私を見てまふくんは続ける

「もっとほしいって思うのはきっと当たり前のことなんだよ？

だから欲深くなんてないと思う

それに気づけて、ありがとうって気持ちを忘れなければ一人前だと思うな」

なんて言ったまふくん

なぁんだ全部お見通しじゃん

おかしくなって笑いがこぼれる

『ありがとう、まふくん』