＊ ページ35
春の暖かな日差しがバスの中に降り注ぐ、
バスには、私と翔しか乗っていなくて
後部座席の一番後ろ
会話もなくただ、揺られてる
その暖かな日差しとともに
書庫でもよく見かけた、白い繊維のふわふわを発見し、
私は、ゆっくり、手を伸ばす。
「何してんの？」
「ふわふわが・・・」
私の指先を、翔もも見つめ、
「あぁ、確かに・・・綺麗だな・・・ホコリだけど」
「もう、ホコリって言わないで」
「あはは
だって、どう見たってホコリじゃん」
「もう、翔にはわかんないんだよ、この純粋な気持が」
「純粋ねぇ・・・」
「・・・」
そして、再び沈黙が始まる
きっとお互い疲れてるんだと
再び言い聞かせる
すると
「ほら、見てみ舟屋」
「舟屋？」
「そう、家の下にね、ほら船が入る車庫みたいな作りになってるんだ、
この風景、実は重要伝統的建造物群保存地区に指定されてる」
「はい？なんて？」
「あははは、重要伝統的建造物群保存地区ね」
「全くわかんないけど、すごいってことだけわかった」
あははは
と横で大笑いしてる翔だけど。
でも、私にはわかる
それはムリをしてる笑い方だってことが
海辺で育った私たちにとって、この風景は、
全くと言って違えど、やっぱり思い出してしまうんだ
どんどんと小さくなっていく、舟屋の景色
そして、そのうち、再び、海と山の間を、バスがゆっくりと走って行く。
そして、いつかその景色がジワリと・・・
滲み始めた
ぜったいに翔には気づかれてはいけないと思い、
身体ごと、窓のほうへとむけ、
それがこぼれ落ちるのを、耐えた
気づかれないように、
呼吸も止める
でも、呼吸を止めたことによって、
余計に苦しくなり
とうとう、耐えていた涙が、頬を伝った
それでも、私は窓の方を見続けた
すると
繋いでいた翔の手に
ギュッと力が入り
そして、静かに
「・・・帰ろっか」
とそれは、
消えそうなくらい弱々しい声だった
その言葉を聞いた途端
一気に涙が流れ出し
頬を伝って
スカートの上にポタンと落ちた
それでも、
私はまだ窓を見続けた
なぜだかわからないけれど、
隣にいる翔の顔がわかるから・・
きっと、今、翔を見ると
声を出して泣いてしまうかもしれない
翔も何も言わず、ただ
私の手を握っていた
バスは翔と私の２人だけ
苦しくて切なくて
そして、そこから見えた海もまた
ぞわぞわと、私たちの不安を煽るようなものだった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1829人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫姫(プロフ) - Sara xxxさん» やったwへへっ。この過去ありきの10年後、しきちゃん頑張りますw (2018年7月29日 7時) (
レス) id: b7a52fdc9b (このIDを非表示/違反報告)
Sara xxx(プロフ) - 紫姫さん〜(T ^ T) もうだめ。泣く。何この胸が苦しくなる展開…。続きを読むべく行ってまいります！！ (2018年7月29日 0時) (レス) id: d71a440a0a (このIDを非表示/違反報告)
紫姫(プロフ) - ケイトさん» ありがとうございます。今回は久しぶりにオリジナルを書いてるので、楽しいです。オトナになった主人公ちゃんの、また違った悩みを描けていけたらと思います (2018年7月27日 7時) (レス) id: b7a52fdc9b (このIDを非表示/違反報告)
紫姫(プロフ) - すりおろし梨。さん» あはは、いつもありがとうございます。お宝回収、ぜひお願いいたします。中には今回はフェイクも入れてますw そう、なんと言ってもあの翔くん、何も無くして離れたりしませんw (2018年7月27日 7時) (レス) id: b7a52fdc9b (このIDを非表示/違反報告)
紫姫(プロフ) - せいこさん» 花火は昼間にするもんですwいつもありがとうございます。若さゆえにを表現したくて、かなり今回は大変でした、なんせ私には遠い昔(;゜∇゜)これから、オトナに気持ちをシフトチェンジしていくので、スタートもしかしたら、慣らすために過去を行ったり来たりするかもです (2018年7月27日 7時) (レス) id: b7a52fdc9b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紫姫
| 作成日時：2018年6月24日 19時
