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ちょっとして、BARに繋がる階段を降りてくる足音がして、私たちは慌てて体を離した。
送ってくって、言ってくれた隆二は照れてるように見える。
先に階段をのぼって、ふいに私の手を取った。
「暗いから気をつけて?」
「……ありがとう。」
エスコートしてくれる隆二は本当に男として魅力的だと思う。
心が弱ってる今、少しでも優しくされると困っちゃうな。
それに、好きだって言われたら……。
嬉しくないわけがない。
階段をのぼりきって歩き始めた大通り。
繋いだ手はお互い離さずにいた。
「手、冷たっ。」
呟いた隆二は、繋いだ手を上着のポケットに入れた。
その中で、ぎゅっと握りしめてきた。
「こういうのやってみたかったんだよね。」
「ポケットで手繋ぐの?」
「よくない?なんか仲良さそうに見えんじゃん。」
「でもこれってカップルがすることじゃない?」
「ん?なに?なんか言った?」
「え、だから、カップルが…」
「えー?聞こえなーい。」
へへへって笑う隆二はポケットの中で手を繋いで、もう片方の手も上着のポケットに入れて楽しそうに歩く。
強引なんだけど、イヤじゃない。
隆二と手を繋いで隣を歩くのが楽しかった。
「ねぇ隆二、どうして私のこと避けてたの?」
「あー、それね……聞きたいの?」
「うん、気になるもん。」
「俺のこと少しは気にしてくれてた?」
「そりゃするよ。あからさまに避けるんだもん。会わないとか……ショックだったんだから。」
「だよね。ほんとごめん。」
見あげたら、困った顔で謝ってくれた隆二。
ほんとショックだったけど、もう許してるから、大丈夫。
「Aさぁ、岩ちゃんのことフッたんでしょ?」
「うん……岩田くんに聞いたの?」
「そうとう凹んでたよ岩ちゃん。」
「……そっか。」
「あれ見たら、Aに会うのが怖くなったんだよ俺。」
「なんで…」
「今以上に好きになるのが怖かった、って言ったら伝わる?」
「……なんとなく?」
「自分を抑えられなくなんのイヤだったんだよ。それが岩ちゃんを傷つけるかもしれないから。」
「隆二はほんと優しい人だよね。自分のことより人のことを考えるんだもん。私にはできないよ。」
どんな理由があったって、自分のことがかわいくて、誰かを優先させるなんて。
考えることはできても、実際にやるのは難しいことだと思う。
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くるみ(プロフ) - atokさん» atokさんお待たせしました。atokさん的にはおいしい展開になってきましたよ。あー、流されちゃう(笑) (2019年4月8日 20時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 白雪さん» 白雪さーん!お待たせしました。やだ、白雪さんの怒りが爆発しちゃってますね(笑)どうしよう…この先ちょっと白雪さんの反応が怖いというか楽しみというか(笑)また待ってますよー。 (2019年4月8日 20時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 名無し49962号さん» 名無し49962号さんお待たせしました。ドキドキしていただけて光栄です。なにかと切ない場面ばかりなので、そういった声を聴けて安心しました。こちらこそコメントありがとうございます。 (2019年4月8日 19時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ねーやんさん» ねーやんさんお待たせしました。先の妄想はいかがですか?お話の内容と合ってたかな?(笑)優しい隆二だから……どう動くんでしょう(笑) (2019年4月8日 19時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - yuさん» yuさんお待たせしました。課長にイライラしちゃってます?(笑)ほんと言葉足らずな人で…糸は絡まるばかりです。そんな課長をどうぞこれからも見守ってあげてください。 (2019年4月8日 19時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くるみ | 作成日時:2019年1月24日 23時