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「なにしたって、別になんもねぇけど。お前に電話したら川野が出て、酔っちゃったって言うから迎えに行っただけ。」
「わざわざ迎えにきてくれたの?」
「……行ってたな、走って。」
すげー疲れたしって言う臣はまた手を伸ばしてきて、私の髪を指に絡みつけて遊ぶ。
「…ありがとう。」
「いいえ。」
「ごめんね、迷惑かけちゃって。」
「いや、別に気にしてない、そこは…」
「そこは?」
「俺に悪いと思ってんなら思い出してほしいんだけど…」
「…なにを?」
「……昨日、俺に…」
臣が言いかけたとこで、会話をさくように、部屋の電話が鳴った。
「はい、今行きます。」
タクシーの準備ができたって内線。
「ごめん、早く来いってフロントにキレられたから行くわ。」
「それはヤバいよ、登坂課長。」
「下行くの超気まずいんだけど。」
「なら早く行きなよ、もっとキレちゃうよ?」
「あのさ……今日の夜、あいてる?」
「夜なら……うん。」
「メシ食べに行かない?」
「……いいけど、大丈夫なの?私と行って。」
「今は上司と部下だろ……誰にも文句言わせねぇよ。昨日の打ち合わせの報告してもらわないと。」
「あ、そうだった……今日はサロンにいると思ったから。」
「だから、夜な。」
「うん、お腹すかせて待ってる。」
「出たよ、ガキんちょAちゃん。」
じゃあなって、立ち上がった臣は、窓際の椅子の背もたれに掛けていたスーツの上着を羽織って。
仕事用のカバンを持って、ドアに向かう。
「いってらっしゃい。」
そのあとを追って見送る。
私だけの恋人ごっこ。
こんな毎日なら、どれだけ幸せなんだろう。
「カードキー、フロントに預けといて。」
「わかった。」
「行ってきます。」
靴を履いて、臣は部屋のドアノブに手をかけた。
ドアがゆっくり開くのを見ていたら、また寂しくなってきちゃった。
こんな姿もう見れないかもしれない。
臣の後ろ姿を目に焼きつけようと見つめてたら、突然、くるりとこっちを向いた。
「…忘れた…」
そう呟いて、キスをしてきた。
可愛らしく、ちゅっと音を鳴らして。
満足そうに口角をあげて笑う臣は部屋を出ていった。
夜が来るの楽しみなようで、なんか気が引ける。
このままでいいのかなって、複雑になった。
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くるみ(プロフ) - atokさん» atokさんお待たせしました。atokさん的にはおいしい展開になってきましたよ。あー、流されちゃう(笑) (2019年4月8日 20時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 白雪さん» 白雪さーん!お待たせしました。やだ、白雪さんの怒りが爆発しちゃってますね(笑)どうしよう…この先ちょっと白雪さんの反応が怖いというか楽しみというか(笑)また待ってますよー。 (2019年4月8日 20時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 名無し49962号さん» 名無し49962号さんお待たせしました。ドキドキしていただけて光栄です。なにかと切ない場面ばかりなので、そういった声を聴けて安心しました。こちらこそコメントありがとうございます。 (2019年4月8日 19時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ねーやんさん» ねーやんさんお待たせしました。先の妄想はいかがですか?お話の内容と合ってたかな?(笑)優しい隆二だから……どう動くんでしょう(笑) (2019年4月8日 19時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - yuさん» yuさんお待たせしました。課長にイライラしちゃってます?(笑)ほんと言葉足らずな人で…糸は絡まるばかりです。そんな課長をどうぞこれからも見守ってあげてください。 (2019年4月8日 19時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くるみ | 作成日時:2019年1月24日 23時