甘蜜蝶々3

130 広臣side ページ32

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思い返せば、Aはいつもそばにいた。





水曜の夜は拒むことなく部屋に来て、強引にキスしたって、抱いたって、俺の全部を受け入れてくれた。









『帰らないで』





そう呟いて弱々しく腕を掴んできたり







『臣がいいんだもん』





潤んだ目で抱きついてきたり







『大丈夫、ここにいるから。臣のこと、ひとりにしないから』





一晩中となりにいてくれて、寝たフリする俺にこっそりキスして照れて








自分の気持ちを隠しながらも会話のあちこちに散りばめられてたAからのサイン。





それを、俺は見落としてた。




全然気づいてやれなかった。









『ただのせふれとしか思ってないくせに』






A、お前さ…






『幸せになれないなら、一生一人でいいです』






どれだけ強がってきた？






『課長は、小百合さんのこと好きですか？』






どれだけ傷ついて






『小百合さんとキスした？』





どれだけ苦しんでんの？









「……A……ほんとごめん。」









後悔の波に呑まれそうで、眠るAを強く抱きしめた。




俺がちゃんとお前の気持ちと、言葉の一つ一つと向き合ってれば、こんな遠回りすることなかったのに。




今までずっと、傷つけて、苦しめて、悲しませてごめん。






そばにいて笑っててほしい、なんて思ってたくせに、Aから笑顔を奪ってたんだな。






自分だけが辛いとか、泣いてるんだって、思い込んでたよ。







俺なんかより、ずっと、ずっと




泣きたかったのは、Aだよな。







それでも俺の前では笑顔を振りまいて、手を握ってくれて、仕事でも支えてくれてる。





そんなAのこと、心の底から好きだ。





たとえ誰かを敵に回すことになっても、夢を失ってもいい。








これからは俺がAを笑わせてあげるから。





ずっとそばにいて、心ん中まで温めるよ。





嬉しいときも、泣きたいときも、優しく抱きしめるから。








「もう少し……待ってて。」








すべてに決着つけるまで、少しだけ。




お願いだから、俺を消さないで。





ふたり手を繋いで歩けるその日まで、俺のこと、好きでいて。









それが、俺の今の願い。

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