113 隆二side ページ15
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「なら寝る前に乾杯やな。」
「そうだね。健ちゃんも酒持った?」
「ん、隆二、よろしく。」
「じゃあ、岩ちゃん、過ぎちゃったけど……誕生日おめでとー!」
「おめでとう、岩ちゃん。」
俺と健ちゃんがグラスを合わせると微かに岩ちゃんは微笑んだ。
そしてそのすぐあとに小さな声で呟いた。
「……俺って、ほんと幸せ者だなぁ。」
なんて、しみじみと言うから、つい口に含んだ酒を吹き出しそうになった。
「岩ちゃん大袈裟やで。でもまぁ、幸せもんやん。こうやって祝ってもらえるんやからな。」
「仕事でも大成功してるしなぁ。岩ちゃんマジで凄いよ、男としてかっこいいと思うよ。」
「ほんまそれやな。隆二たまにはええ事言うやん。」
「でしょ?俺らの誇りだよね、岩ちゃん。」
「そうやで岩ちゃん。この勢いでこのバーは岩ちゃんファンの聖地にしてや?サインとか飾ってなぁ、額縁に写真入れとくか?」
「健ちゃん、金と女のにおいがすごい。」
「これが経営者や。」
「人使うとか最低。」
「はー?」
「図星すぎてなんも言えねぇじゃん。」
「うるせー、隆二のバーカバーカ。」
「ガキかよ、バーカバーカって。」
大人げない健ちゃんに笑って、ふと岩ちゃんを見てみたら、握ったグラスをぼーっと見てた。
なんか今日はやたらとテンション低い。
「岩ちゃんどうした?気持ち悪い?」
「えらい静かやん。無理して飲まんでもええで?」
心配になって言ったけど、岩ちゃんはひとつも表情を変えない。
無表情のまま。
「もう……俺には仕事しか………残ってないよ。」
そんなことを言いだした。
なんだろ急に。
「ほんとうに祝ってほしい人は……もう会ってくんないし……はー、最悪。」
健ちゃんと目を合わせて、たぶん同じことを思った。
あー、Aのことだなって。
2人になにがあったのか気になるとこ。
だから俺も健ちゃんもなにも言わずに、ただ耳を傾け続けた。
「全然かっこよくなんかねーよ俺。超ダサいし、超かっこ悪い。あーんな惨めな姿……Aさんに見せたくなかった。」
そう言った岩ちゃんの目から、ぽろっと涙がこぼれた。
いつも強気な岩ちゃんが見せた初めての涙。
俺の心は複雑に揺れた。
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くるみ(プロフ) - atokさん» atokさんお待たせしました。atokさん的にはおいしい展開になってきましたよ。あー、流されちゃう(笑) (2019年4月8日 20時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 白雪さん» 白雪さーん!お待たせしました。やだ、白雪さんの怒りが爆発しちゃってますね(笑)どうしよう…この先ちょっと白雪さんの反応が怖いというか楽しみというか(笑)また待ってますよー。 (2019年4月8日 20時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 名無し49962号さん» 名無し49962号さんお待たせしました。ドキドキしていただけて光栄です。なにかと切ない場面ばかりなので、そういった声を聴けて安心しました。こちらこそコメントありがとうございます。 (2019年4月8日 19時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ねーやんさん» ねーやんさんお待たせしました。先の妄想はいかがですか?お話の内容と合ってたかな?(笑)優しい隆二だから……どう動くんでしょう(笑) (2019年4月8日 19時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - yuさん» yuさんお待たせしました。課長にイライラしちゃってます?(笑)ほんと言葉足らずな人で…糸は絡まるばかりです。そんな課長をどうぞこれからも見守ってあげてください。 (2019年4月8日 19時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くるみ | 作成日時:2019年1月24日 23時