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顔を上げて、ほんと?って聞いたら、臣は優しい手つきで髪を撫でてくれる。
「ほんと。だから今のすげー久しぶりのキスだった。」
「…そっか。」
「お前は?」
「……私は……」
言えない。
岩田くんとしたなんて、言いたくない。
けれど、あとに続ける言葉が出てこない。
言葉に詰まる私に臣はすぐに気づいて、ため息をひとつついた。
「……うざっ。」
そう言って、私をベッドに寝かせて、キスをしてきた。
食らいつく感じの、少し強引なキス。
だけど全然イヤだなんて思わなかった。
むしろ、嬉しかった。
もっと嫉妬して、狂うくらい愛してほしい。
あなたになら、全てを捧げるから。
お願い、愛して。
音をたてて口唇を離した臣は、私の前髪をかきあげて、鋭い目つきで見下ろしてくる。
冷たい目なのに、胸は高鳴るばかり。
「お前は俺のだったのにな………って、手放したのは俺か。」
「……臣…」
「なんだよ?」
「……もっと、して。」
「風邪移っても知らねぇよ?」
「いいよ。」
「キスだけで止まると思ってんの?」
「熱上がっても知らないよ?」
「いいんじゃん?看病してくれんだろ?」
「どうしてもって言うなら。」
「……ほんと生意気だな。」
「…臣……」
「なに?」
「……これで……」
最後にするからって、私の言葉は、臣のキスに遮られた。
キスをしながら手を伸ばした臣は、サイドテーブルのランプを静かに消した。
私が言いたかったことは、ちゃんと伝わったんだと思う。
臣と過ごす最後の夜。
いつもより長く濃いキスに、私に触れる手も余すとこなく全部に触れて。
「……A。」
何度も名前を呟いて、そのあとにはキスをくれた。
カーテンの隙間から射す外のネオンが、揺れる臣を微かに照らす。
目を閉じて歪む顔を見たら、愛おしさが溢れて。
「おみ……チュー、して?」
首に腕をまわしてキスをせがんだ。
「A………すげーかわいい。」
微笑む臣からのキスは
甘くて、優しくて
すごく幸せだった。
ほんとうに、幸せな、最後の夜だった。
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くるみ(プロフ) - atokさん» atokさんお待たせしました。atokさん的にはおいしい展開になってきましたよ。あー、流されちゃう(笑) (2019年4月8日 20時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 白雪さん» 白雪さーん!お待たせしました。やだ、白雪さんの怒りが爆発しちゃってますね(笑)どうしよう…この先ちょっと白雪さんの反応が怖いというか楽しみというか(笑)また待ってますよー。 (2019年4月8日 20時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 名無し49962号さん» 名無し49962号さんお待たせしました。ドキドキしていただけて光栄です。なにかと切ない場面ばかりなので、そういった声を聴けて安心しました。こちらこそコメントありがとうございます。 (2019年4月8日 19時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ねーやんさん» ねーやんさんお待たせしました。先の妄想はいかがですか?お話の内容と合ってたかな?(笑)優しい隆二だから……どう動くんでしょう(笑) (2019年4月8日 19時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - yuさん» yuさんお待たせしました。課長にイライラしちゃってます?(笑)ほんと言葉足らずな人で…糸は絡まるばかりです。そんな課長をどうぞこれからも見守ってあげてください。 (2019年4月8日 19時) (レス) id: b2014868ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くるみ | 作成日時:2019年1月24日 23時