甘蜜蝶々3

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お昼の社員食堂。




今日はもっぱら、あの話でもちきりだった。








登坂さんが異動しちゃうんだって




もう見れないなんて生きてけない




最後の賭けで告ってみる？








臣の辞令が出た数時間後には、女子社員の間で騒ぎになった。





さすが人気者の登坂課長。





異動したあとには、登坂ロス、なんて言葉が流行りそう。








「……みんな同じ気持ちなんですね。私も生きていけるかどうか心配です。」





「菜美ちゃん大袈裟。大丈夫、ちゃーんと生きていけるから。」








ハンバーグ定食を食べる菜美ちゃんは、ハンバーグをお箸でブスっと刺して、口を尖らせる。





すごい不貞腐れちゃってるよ。









「Aさんは寂しくないんですか？のんきにから揚げ食べちゃってますけど。」





「菜美ちゃんもちゃんと食べないと。午後がんばれないよ？」





「なんか……のど通りません。」





「そんなに課長のこと好きだったの？」





「当たり前じゃないですか。あのルックスですよ？おまけに優しいって、最強ですよあの人。」






「ちょっと待って……優しかったっけ？」






「優しいじゃないですか。まぁAさんにはいつからか素を出すようになった気もしますけど。」






「言われてみれば……みんなには口調も優しかったかも。」






「Aさんには厳しいことを言ったりもあるけど、思いきり笑うのもふざけるのも、Aさんの前だけですよね。みんな言ってますもん。」






「…そうかなぁ？」






「それだけ心を開いてたってことですよね。私もそうなりたかったなぁ。羨ましかったです、Aさんが。」





「いつでも代わってあげたのに。」






「無理ですよ、Aさんみたいに冷たく返せないですもん。私なら何言われてもキュンとしちゃいますよ。」








……私もキュンとしちゃってたけど。





本当は私だって寂しいよ？





でも気を張ってないと、泣いちゃいそうだから。





最後の日まで私は笑顔で過ごそうと思う。









「午後も打ち合わせあるから、私先に事務所戻るよ？」






「えー、寂しいー。」






「菜美ちゃんが全然食べないから。」






「……わかりました。課長との思い出に浸りながら食べるんで大丈夫です。」






「……そっか……ちゃんと全部食べるんだよ？」






「はーい。」








菜美ちゃん子どもみたい。





そんなところが可愛くて好きだけど。

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