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住む世界が違う ページ25

『もう、戻れないみたい』

「戻れない?」

  頷くと同時に、ずっと感じていた気配へ銃を持った手だけを向ける。

『何しているのかな? 内務省異能特務課の代理人さん?』

「Aちゃん!?」

  後で手を挙げて溜息をついている内務省異能特務課の代理人、坂口安吾。 彼が潜入していたとき、私は未だ何も知らない子供だった。 でも今は・・・

「お久しぶりです、Aさん。 その物騒なもの、下ろしていただけませんか?」

『お断りです、坂口さん。 いつでも異能発動の準備はできていますし、治も今は此処には居ません』

  貴方は今すぐにでも殺すことができます。

 そう遠回しに伝えるも、全く臆する様子はない。 流石マフィアに潜入捜査をしていただけある。

「Aさん、其処の一般人の少年をまず解放していただいてよろしいですか? 内密に、お話ししたいことがありますので」

  僕が来たということは、どういう意味か解りますよね?

 そう言って、憐君を視線で示す。

  憐君を解放しろだって? 笑わせる。 彼は自分から私と一緒にいるんだから、人聞きの悪いことをいわないで欲しい。

「ちょっと、お兄さん何なの? 俺は今、漸く再会できた婚約者と喋ってるんだけど」

「婚約者? 嗚呼、貴方が赤城憐さんでしたか。 まさか、Aさんの所属を御存知ないので?」

「所属? Aちゃんは大学にでも行っているんじゃないの?」

 坂口さんの棘のある言い方に、憐君は苛々とした声で反論した。

「大学、ですか? ・・・成程、貴女は」

『ッ坂口さん! これ以上云わないで下さい。 お願いします』

 思わず立ち上がって大声を出した私を怪訝そうに見る憐君に、胸がきゅっと痛む。 憐君には申し訳ないが、私と貴方はもう

「Aちゃん?」

『ごめん、憐君。 お別れみたい』

「お、別れ? 嘘だろ? だって、僕はずっと必死に君を探して、君を探す為だけに生きて来たっていっても良いくらいなのに! 厭だ、行かないで。 僕をもう」

 一人にしないで

  そう言って、袖をきゅっと握ってか細い、掠れた声で呟く憐君に、離れたくないと叫びたくなったが、憐君の将来を考えれば、最初からきっと決まっていたのだ。

『ごめんね、憐君』

  だから、光の世界の住人と交わるのは厭なんだ。 住む世界が違うなんて、解ってたじゃないか。

別れ→←二人きり



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なすび(プロフ) - りとのおへやさん» 有難うございます!  これからもそう言っていただけるよう、頑張りますね! (2019年6月2日 21時) (レス) id: 6cdc79c834 (このIDを非表示/違反報告)
りとのおへや(プロフ) - めちゃめちゃ良かったです!中也オチマジで神!!!本当に、こんな神作品を読ませていただけて感謝しかないです! (2019年6月2日 20時) (レス) id: 534e38ce7a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なすび | 作成日時:2019年1月30日 21時

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