休憩した ver.三日月 ページ9
「主、ちといいか？」
審神者部屋の襖を開け、俺はそう声をかける。
主は仕事机に向けていた顔をこちらにやると、不思議そうな表情をつくった。
「三日月さん？ 何か用ですか？」
「用、というほどのことではないのだが……」
そう言うと、俺は持っていた菓子の袋を主に見せる。
「短刀の子らに貰ってな。一緒に食べないか？」
「いいですね！ 休憩しようかと思ってたので、丁度良かったです」
笑顔を浮かべそう言うと、主は立ち上がり、俺の方まで歩いてくる。
「折角なんで、陽当たりの良いところで食べませんか？ その方がゆっくりできますし」
「うむ。主の好きな所でいいぞ。俺は主と共に菓子が食えるだけで満足だ」
「またおじいちゃんはそんなこと言って……。僕も嬉しいんですけど」
いつも通りふわふわと笑う主。この表情には、誰であっても肩の力が抜けてしまうような、不思議な力がある。
その人懐っこい笑顔に、俺も虜にされたらしい。最初の頃はそうでもなかったと思うのだが……。
いや、最初から既になっていたのかもしれん。
それくらい、主の笑顔は心地の良い毒なのだ。
「僕の好きな所……。あ、縁側とかはどうでしょう？ あそこなら暖かいですよ」
「俺に異論はないぞ。では、そこで食べるとするか」
「はい！」
俺の言葉に、主は嬉しそうな返事で返す。
本当に孫のようで愛らしいなあ。
そう思いながら俺が縁側へと向かおうとした時。主は、ふと何かを思い出したように「あ」と声を漏らした。
「ごめんなさい。三日月さん、先に縁側へ行っててください。直ぐに行きますから！」
「うん？ そうか、わかった」
パタパタとどこかへ向かう主を後にして、俺は縁側へ歩みを進める。
到着し、腰を掛けながら待っていると、湯呑みと急須を乗せたお盆を持った主が現れる。
「すみません、待たせてしまって……」
「いや、俺もさっき着いたばかりだ。……茶を淹れて来てくれたのか。世話をかける」
「いいえ。お菓子にお茶はつきものだっていう、ただの僕の偏見です」
お盆を下におろすと、主は慣れた手つきでお茶を注ぐ。
見た目にそぐわない幼い性格をしている主だが、他人への気遣いや、自我といったものはしっかりしている。
……本当に、不思議な人間だ。俺らの主は。
「それじゃ、いただきましょう！」
「ああ」
それから暫く、俺は主と共にまったりとした平和な時間を過ごしたのだった。
夜更かしした ver.一期→←ver.鳴狐(流血表現・SAN値注意)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 74人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ほりたけ(プロフ) - 遅ればせながら、2023の現在この作品を見つけ、あまりにも素敵だったのでコメントを残します。1番初めの山姥切国広のシチュエーションが特に刺さりました。刀剣達の解像度が高く、このキャラなら言う！ということが何度かありました。素晴らしい作品を有難うございます (8月17日 17時) (
レス) id: bf5aeb1f39 (このIDを非表示/違反報告)
らりるれお(プロフ) - 埋夜冬さん» こちらこそ、遅くなってしまい申し訳ありませんでした……！ 文字数のせいでかなり乱雑な文になってしまいましたが、楽しんでいただけたようで何よりです(^^) 三日月さん、来てくれるといいですね！ (2018年9月25日 13時) (レス) id: 12ec73fc72 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - らりるれおさん» リクエスト受けて下さりありがとうございました！おじいちゃん最強すぎだろやっぱり大好きと思った私です(笑)そして何時になったら我が本丸にも来てくれるんだろう………。 (2018年9月25日 7時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - らりるれおさん» リクエスト受けて下さりありがとうございました！うひゃー可愛いって悶絶しました(笑) (2018年8月17日 11時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - らりるれおさん» ありがとうございます！主が寝ぼけて甘えまくるっていうのが見たいです！キャラはお任せします！ あと記憶喪失した主も見たいです！いきなり2つ頼んでごめんなさい！楽しみにしてます！ (2018年8月9日 17時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らりるれお | 作成日時：2018年2月25日 22時
