36.凄い人said及川 ページ36
及川side
「俺、春高ってう1月にある大会に出るんだよね。だからさ、本当にくよくよしてらんないの。次最後だから頑張んなきゃね」
.
「うそ」
.
ぬるい風と共に、俺の発した言葉の返事が流れてくる。
今、この子は何て言ったのだろう。
聞き間違える程短い返事が来たと思う。
しかも、俺には”嘘”と聞こえた。
何が嘘かも、それが聞き間違えかもわからないまま、俺は彼女を見つめる。
俯いて目元は見えないが、きつく結んだ口は先ほどまで言葉を紡いでいたとは思えない程だ。
少しそのまま次の言葉を待っていると、重々しく口が開いた。
「嘘だよ。そんなの」
だから、何が嘘なんだ。
そう喉から言葉が出るより先に、顔を上げたAちゃんの表情に息を飲む。
何で俺より悔しそうな顔してんだろ。
何でだよ。
そう思ったが、言えなかった。
幼い頃しか一緒に居なかってけど、分かる。
この子は俺が負けた事を悔しがっている訳じゃない。
きっとこの子は俺の感情を理解する事が出来ない自分が悔しいのだ。
「及川君は凄い人だけど、昨日の今日でそんなに前が向ける人じゃないもん」
ゆっくり、ゆっくりとその言葉は俺の心を浸食する。
それが気持ち悪くて、でも心地よくて訳が分からなかった。
「確かに、次に向けて切り替えは大事だし、今ここで弱音なんか吐いたらモチベーションが下がっちゃうけどさ」
「それはチームの事でしょ?でも、私はチームメイトじゃないし、及川君が何言おうと下がるモチベーションなんて無いんだよ」
"関係ない人の前まで頑張んなくてもいいんじゃない?"
湿り気を帯び始めた夏の風が一気にカラッとした錯覚に陥る。
首の裏は熱いし、風を浴びるAちゃんが異常な程キラキラして見えた。
心臓がうるさい。
「あぁあああっ」
俺は情けなさにAちゃんの机に突っ伏する。
何だこの幼馴染は。
突然項垂れた俺にAちゃんは
「ごめん!出過ぎた真似を!!あああっごめん!偉そうに!」
と全く見当違いの事を口にし始める。
「違うよ。ありがとう」
そう目だけを上げて言うと、Aちゃんはほっとした様な顔をした。
「じゃあ、少しだけ聞いてくんない?」
「もちろん」
そう言って、俺は岩ちゃんにも言えないことを喋り始めるのだ。
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結城(プロフ) - 甘露寺さん» 甘露寺様:初めまして!ここまで読んで下さってありがとうございました。またこんな古い夢小説を見つけてくれてありがとうございました。また少しずつですが再開し始めましたので、お付き合い頂けたら幸いです(*^▽^*) (2020年5月23日 0時) (レス) id: ef38ccb588 (このIDを非表示/違反報告)
甘露寺 - 気になるところで止まっておるー更新して下さーい(土下座) (2020年5月5日 2時) (レス) id: 952a700b40 (このIDを非表示/違反報告)
結城(プロフ) - 美月さん» 美月様:初めまして!お気に入り登録ありがとうございます。面白いと言っていただけて本当に嬉しいです(*´▽`*)更新がのろまですが、これからも頑張っていきますのでよろしくお願いいたします<m(__)m> (2018年8月22日 0時) (レス) id: 9a4bc7de57 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - とても面白かったです!! お気に入りさせて頂きました!応援してます! (2018年8月20日 23時) (レス) id: 0d411ab85a (このIDを非表示/違反報告)
結城(プロフ) - 明佳さん» 初めまして。この度はご指摘ありがとうございました。設定頁更新しましたので確認をお願い致します。 (2018年6月14日 18時) (レス) id: 9a4bc7de57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:結城 | 作成日時:2018年3月27日 22時