邪竜百年戦争 オルレアン 別れと希望 ページ21
ワイバーンまでやって来て、かなりの混戦となった。
『気を付けてくれ！サーヴァント1騎君達の行く方向に居る！』
マジかよ！
後ろでは戦闘が、始まったらしく建物が崩れる音が聞こえる。
｢通しませんよ｣
と、声と共に大きな剣の様なものが振り下ろされた。
｢嬢ちゃん！！｣
と、片手に持った槍でクーがそれを弾く。
あっぶねぇ！あれ、確実に首狙ってたよな！？
｢貴方は…サンソン…｣
｢…お久しぶりです。王妃｣
｢サンソン……ムッシュ·ド·パリと呼ばれた…処刑人…｣
｢ええ！そして、史上2番目に人を処刑したとされる、処刑のエキスパートです！｣
マシュが盾を構え、私の前に出る。
｢……アマデウス。マスターを頼んだわ｣
｢………分かったよ。マリー｣
その声と共に、モーツァルトに担がれる。
｢なっ！？降ろせ！おい！モーツァルト！！｣
｢マスター。彼女の思いを無駄にしないで欲しい。これは、君の為。このフランスの為なんだ｣
そう言われると、ぐうの音も出ない。
｢分かった。王妃様！また！｣
｢ええ。可愛いマスター。私、貴女とマシュ、ジャンヌに会えてとても嬉しかったわ。楽しかったわ。ありがとう｣
そう言って、王妃様は微笑んだ。
あぁ、きっと彼女は、王妃様は"前も"笑って死んだのだろう。
彼女は、きっと私よりも辛かったと思う。自分が愛した、フランスが竜に蹂躙されるところを見たのだから。
自分の騎士に刃を向けられたのだから。
でも、彼女は笑っていた。
なら、私が泣いてどうする。かの王妃様が笑ったのだ。泣いては、いけない。
息を大きく吸い込み、モーツァルトから降り、指示を出す。
｢皆！走り抜け！！彼女らの決意を無駄にするな！｣
自分の、足で全速力で駆ける。
そうだ。前を向け。走れ。決して、振り返るな。
私には、まだ前に進むための立派な足がある。
進め。彼女らの決意を無駄にしないために。
彼女らの、決意を、誇り高き決意を穢さないために。
光輪が浮かぶ、青空。
だが、その青はどこまでも澄んでいて、決して光輪に穢されない。そんな、青空だった。
その下を、私達は駆け抜けた。
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作者名：キーリア | 作成日時：2016年10月2日 21時
