プロローグ ページ2
蝉が鳴く。それは、よく誰も居ない校庭に響いていた。
｢あっっっっつ！！！｣
｢立香先輩うるさいです。私も暑いんだから、我慢してください｣
｢いやーだってさ、暑くね？暑いよね？暑いだろ？｣
｢無駄な三段変化やめろ。はぁ、とりあえずこの本返したら終わりですから静かにしてください｣
一見兄妹に見える、男女の腕には積み上げられた本の山があった。
それは、どれも星に関する本ばかりである。
｢はぁー！！終わったー！｣
｢結局、部活来たの先輩と私だけって…この部活終わりですね｣
｢いや！終わらせん！！絶対にだ！！そのために、A！お主がおるのだ！｣
｢ハイハイ、寝言は寝てからベットの上でどうぞ｣
｢冷たい！！俺の後輩がこんなにも冷たい！！｣
｢暑いって、言ってたの先輩ですよね？じゃあ、ちょうどいいじゃないですか？｣
｢うぐっ…｣
いつもの、なんでもない話。
夕暮れが迫る、帰り道。
｢あ、そうだ。なぁ、夏休み暇か？｣
｢まぁ、そうですね。母は、夏限りの仕事があるそうで海外に行ってますし、兄は兄で忙しいし………父は私のことどうでもいいみたいですし…｣
｢なら、話は早い！一緒にヒマラヤ行こうや｣
｢理由が的確じゃないので却下です｣
と、冷ややかに先輩を見つめ早足で前を歩く。
｢あ！ごめんごめん！説明します！しますから！｣
と、焦ったような声で先輩が追いかけてくる。
しょうがないなぁ、と思いつつ歩く速度を遅める。
ふと、見上げた空は1番星である金星が輝く夕暮れ時だった。
｢あ、金星か。金星と、言えばなメソポタミアの…｣
｢女神様のお話なら今日さんざん聞きましたよ。理由早く教えてください｣
｢応とも！｣
先輩の話を聞きながら、また空を見上げる。
綺麗な茜色の空。沈んでいく太陽は、黄金そのもの。
それを邪魔するかのように、薄く光の輪が見えた。
多分気のせいだろう。暑さでやられた、精神など役には立たない。そう、思い先輩の方を見て話を真剣に聞き始めた。
終わりは、密かにやって来ていた事など知る由もなかった。
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作者名：キーリア | 作成日時：2016年10月2日 21時
