見守り ページ15
紅丸side
それは、街の見回りに向かった時の事だ。
民家の角で、朱菜や紫苑を筆頭とした女性陣を見かけた。
内緒話が出来る位の声量の小ささで、何やら話し合っているようだった。
集まり様が尋常じゃないので、見過ごす訳にも行かずに声をかける。
紅「おい、何か──」
朱「しっ! 静かにしてください、お兄様」
紫「今良い所なんです、ほら、あれ……!」
俺が最後まで喋るより早く、ある方向を小声で示した。
手先が指す場所には、沢山の散らばった個装の箱と──。
リムル様が、A様の上にいた。
紅「ッ!?」
余りの衝撃に驚きを隠せないまま、俺の思考は完全に停止する。
この状況は一体どう言う事だ?
公の場でわざわざこんな風にする方々ではない……そうか!
運悪く何かがあって、どうにかしてこう、こうなってしまったんだ!!
もう、半分程度は無理矢理に自分を納得させて、やっとの思いで問い掛ける。
紅「助けなくて良いのか? と言うか、俺まで隠れる意味はあるのかよ……」
空気を読んで、なるべく声が響かないように聞いたが、結局二人に静かにしろと言う圧を食らった。
心なしか、朱菜と紫苑以外の女性陣からもそんな重さを感じる。
紫「良いから、黙って見ていなさい」
謎の恐怖を感じ、逆らえず押し黙って様子を伺う。
俺達がやり取りしていて気が付かなかったが、辺りにあった筈の小物は無くなっていた。
リムル様はA様を見つめ、たまにその大きな目を瞬きさせて固まっていた。
荷物は綺麗にA様の手元に収まり、まるでさっきの事は無かったかのようだった。
最後の一つ、大きな包みを手に取ったA様は、リムル様へと手を向ける。
『これ、あげる』
言われるがまま包みを受け取るリムル様は、未だに頭が追い付いて居ない表情をしていた。
受け取られると同時に、A様の顔が明るくなったのが一目で分かった。
その光景に、そっと見て居た紫苑や住人達、朱菜まで黄色い歓声を上げている。
しかし怖いことに、信じられない位小さく抑えられていた。
俺はと言うと、驚き過ぎて顔が引きつっている感覚しか覚えていない。
A様はまだ何か用事があったようで、俺達が居る方向へと歩いてくる。
その角を曲がる寸前、朱菜と紫苑に気が付いたのか、ぱっと笑顔を振りまいていくA様。
軽い挨拶の後、箱詰めのお菓子を配られた。
──後日その話をしたら、蒼影に恐ろしい事を言われる事になる。
身の心配をしておけ、と。
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作者名:くろわっ | 作成日時:2020年10月12日 19時