開演ブザーは永遠に（３） (ページ49)

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Ｚ編　穴-1 ページ49

「穴に櫻野が関わってるとなると、ノートの在処の候補も一気に絞られてくる」ということで、次の目当ては生徒会室に決定した。
　今やサイズが合わず、ぶかぶかになった高等部の制服から、蜜柑ちゃんがリュックに詰めていた初等部の制服に着替え、部室から出たくないと嫌がる速水先輩を無理やり引っ張り出す。

「角曲がった先に二人分の足音」

　遠目・遠耳のアリスに助けられ、追っ手の目をかい潜りながら生徒会室前に到着する。ここまできたというのに、速水先輩は穴への興味はないのか、はたまた部室に戻りたい気持ちのほうが勝ったのか、驚くほどあっさりと踵を返して「えらい目にあったわー」とぼやきながら帰っていった。

「……おい翼、急げ」
「わーってるって、うるせーなー」

　案の定鍵のかかっていた生徒会室の扉を、翼先輩がアリスを使い、影を操って内側から解錠する。今のところ誰にも見つかってない。あとは生徒会役員が戻ってくる前にノートを探して、と、ドキドキしながら中に入り――

「……感心できない入室の仕方だな」

　薄暗い部屋の奥から冷ややかな声がして息を呑む。つい数時間前に病室で聞いた声だった。

「ノックの一つもない上に、果てはコソ泥の真似か？」

　読んでいた本を机に置き、今井先輩はすべてを見透かしたような目を向ける。今現在、高等部を騒ぎに騒がせている侵入事件の当事者が綺麗に揃っているのだ。逃げ口上を考えるのも苦しい。

「僕も知りたいね。君たちがここにいる理由」

　後ろからまた別の声がする。振り向けば、扉に手をかけて佇む櫻野先輩の姿があった。冷や汗が滲むこちらに対し、櫻野先輩は侵入者を相手にしているとは思えない悠然とした態度だった。私たちの横を通り過ぎて今井先輩の隣に立つ。

「殿内、なぜ黙っている。……それとも答えられないような理由なのか？」

　二人の姿を見て、パチンと頭の中でなにかのピースが嵌る音がした。“二人組の幽霊”。一人が櫻野先輩ならば、もう一人はきっと今井先輩で――

「ウ、ウチのせいなんです！」

　張り詰めた空気を破ったのは蜜柑ちゃんだった。