開演ブザーは永遠に（３） (ページ45)

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新マップが解禁したユーザのごとく口を開けて周りを見ていたら、キョロキョロするなと殿先輩に怒られた。つい癖で先輩と手を繋ごうとして、変に目立つかと引っ込める。あ、不審者っぽい行動をとってしまった……。

　先頭は殿先輩、その後ろには翼先輩が。団体様にはならないよう距離を保ちつつ歩いていると、後ろのほうで流架君が棗君を呼んだ。殿先輩も振り返り、ギョッとした顔で声を張る。

「その道に入るな！」
「え……――わっ！？」

　制止も遅く、“その道”に入ってしまった蜜柑ちゃんと流架君の身体が持ちあがった。な、なんで急に……！？

「ひっ、ぎゃーっ！？」

　流架君は空気椅子ならぬ空中椅子みたいに中途半端な姿勢で固まり、蜜柑ちゃんは大きな悲鳴をあげながらぐるんぐるん回されている。
「おい、どっかのバカが無重力スポットにはいったらしーぞ」と騒ぎにつられて集まってきた人が言った。なんでそんなもんが校舎の中にあるんだ。ホグホグワツワツな魔法学校でもあるまいし。……多少似てはいるのかな、三ミリくらい。
　ぞくぞくと集まる野次馬の中から誰だあの二人、と怪しむ声がして心臓が跳ねた。

「ええい、もー……！一分以内に片つけろ、翼！」

　半ばヤケクソ気味な殿先輩が翼先輩の頭に触れて、増幅のアリスを発動させる。ただでさえ強力な翼先輩のアリスが増幅され、“無重量スポット”全体の影をぐいっと引っ張り、そのまま蜜柑ちゃんたちの本体も引っ張るという荒技で空中浮遊していた二人を助け出した。す、すごい。そして目立つ……。
　ひとまず救出は完了。だけど、これだけ人が集まっちゃって、どうやったらごまかせるんだろう。モブＡ子みたいな立ち位置で殿先輩と翼先輩、助けられた二人を窺い――……なんか、蜜柑ちゃんと流架君、縮んでない……？
「え」という声が、自分からも、周りからも洩れた。ぶかぶかの制服に、到底高等部生のものではない幼なげな顔立ち。小学生が高等部の制服を着ているようにしか見えない。

「おい、こいつら初等部のガキじゃないのか？なんでこいつらがこんなところに……」

　縮んだ流架君、そして私も引っ張って殿先輩は脱兎の如くその場から逃げ出し、翼先輩に蜜柑ちゃん、棗君も同じように廊下を走り出す。