Ｚ編 高等部 後-1 ページ44
流架君と二人でそれぞれの喧嘩を仲裁してから、ようやく潜入開始となった。マンホールの蓋をこじ開け、下水道を伝って高等部の外塀をすり抜ける。
殿先輩の手を借りながら地上へあがり、高等部の敷地内、それもまったくひと気のない場所に出た。業務用の大型ゴミ箱に、今は使われてなさそうな水道場。あと、なぜか大量の石像。後ろを振り向けばレンガを積みあげた外壁がある。そこまで実感が湧かないとはいえ、ここはもう高等部の中だ。意外と侵入簡単？ とか思ったら、そこからが地獄だった。
「ここを通るぞ」と殿先輩は、石像が両脇に立ち並ぶ道を指す。モアイにスフィンクス、仏像にミロのヴィーナス、招き猫埴輪カエル。雑多な種類のそれらは防犯用石像なるものらしく、まさしく侵入者たる私たちを発見したミロのヴィーナスが悲鳴をあげ、仏像は真の防犯装置は目で殺すとばかりに目からビームを放つ。
シチュエーションだけ切り取るとちょっとしたミニゲームみたい。でもこっちの残機はゼロだし、当たると即死確定だ。蜜柑ちゃん諸共翼先輩に腕を引かれて必死に走る。
ヒュンヒュン容赦なく飛んでくるビームを避けながら、百メートルほどの石像の道をどうにかこうにか駆け抜ける。一息つく間もなく人の気配がして、慌てて茂みに隠れた。
そこからも神経を使って迂回に迂回を重ね、ようやく校舎の前までたどりついたときにはヘロヘロになっていた。まだ校舎の中すら入っていないというのに。気合を入れなおすためにペチンと頬を両手で叩く。よし、がんばろう。
こっから先は人とすれ違うだろうし、堂々とうつむいて歩けと殿先輩はちょっとなに言ってるかわからないことを念押ししてから校舎へ入っていった。ためらいつつも先輩に続き、足を踏み入れた高等部の舎内は、初等部のものより年季が入っていて、かといって老朽化した様子はない。荘厳というか、
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作者名：きざし | 作成日時：2020年12月30日 2時
