開演ブザーは永遠に（３） (ページ42)

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「んじゃ、集合場所行こっか！」
「う、うん……」

　羊のようなそうじゃないような、ゆるーいキャラのリュックを背負って蜜柑ちゃんは小屋を出る。その背中に隠れて待ち合わせ場所を目指す。

「……A、どーしたん？お腹痛いん？」
「そ、そーじゃない、けど……なんか……変な感じが……する、というか……」
「ふーん……？ ……あっ、先輩ら待ってる！」

　高等部をぐるりと囲む高い外塀の側で、なにやら揉み合っている殿先輩と翼先輩が見えた瞬間、蜜柑ちゃんは駆け出した。お、置いてかれた……！

「えっと……A……？」
「なに突っ立ってんだ」
「っ！？」

　一人あわあわしていると高等部のお兄さんに話しかけられた。と思ったら、ガリバー飴を食べた流架君と棗君だった。身長がにょきにょき伸びて大人っぽくなっている。さりげなさなんてないほどのギンギラギン。流架君は王子様感がアップしていて、白タイツとカボチャパンツすら履きこなせそう。見たいかどうかは別として。
　もしスミレちゃんがここにいたら黄色い声を通り越して狂喜乱舞しちゃいそうだ。二人とも成長期に突入したら今以上のモテモテっぷりを発揮すること間違いなしだろう。

「……どうしたの？集合場所、この先だよね」
「えっと……えっと、隠れ、させてぇ……」

　そうびから流架君を選択する。棗君を選ぶ度胸はなかった。
　そそくさと流架君の背中に回って隠れる。ウォール・ルカクンだ。棗君からの視線がすごく痛い。ごめんなさいちょっとだけ流架君を貸してください。レンタル料も払うので。……この場合誰に？

「え、ちょ……」
「……さっさと行くぞ、ルカ」

　元の姿以上にコンパスが違うから、若干小走りになる。距離が離れるたびに、これ以上置いていかれてたまるかとブレザーの裾を掴んで流架君を引き留める。棗君の舌打ちが聞こえて心が挫けそうになった。

「――んで、Aは？」
「Aならウチの後ろに……アレ？」
「あの、俺の後ろにいるけど……」

　集合場所に到着後、自分の名前を出されてびくりと肩が震える。このままスルーしてほしかった。

「Aー？ほーら、お兄さんにも見せてみろー」

　やけに楽しげな声とともに殿先輩が近づく気配がする。逃げる間も止める間もなく、あっという間に殿先輩によってそうびが外される。壁が陥落してしまった……。