開演ブザーは永遠に（３） (ページ40)

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Ｚ編　高等部　前-1 ページ40

Ｚの侵入経路かもしれない穴を探すために、高等部に潜入することになった。潜入できるのは半日が限度。実際の時間を考えると、その半分もあるかどうかといったところだ。
　初めは反対していたスミレちゃんは、もうこーなったらしかたないと翻意して、Ｂ組の生徒全員を巻き込み、私と蜜柑ちゃん、流架君、棗君の不在を隠す協力をしてくれる。
　そして、私たち初等部生四人はペンギーの持っていた“ガリバー飴”を食べて高等部生を装い、翼先輩は制服だけ高等部のものに替えて同行する。
　作戦の決行は、今から。

　高等部近くの北の森。「ここで着替えろ」と殿先輩に案内されたのは、ベアの小屋よりも一回りは小さな小屋だった。あちらの小屋とは違いまったく手入れはされておらず、見た目はもちろん、中身もボロボロ。照明の類いは見当たらず、埃臭さが漂ってくる。
　同じくガリバー飴を食べる流架君たちも別のところで着替えるらしい。集合場所を伝えて、なるべく人に顔見られないようにな、と言い残してから殿先輩は高等部のほうに向かっていった。

「えーっと、飴食べて、服着替えて……」
「先に飴を食べちゃうと着替えるの大変じゃない……？」
「あ、そっか、そやな！」

　というわけで、飴を食べるよりも先に、入手経路不明な高等部の制服に着替えはじめた。ブラウスにスカート、ジャケット。襟の形とかサイズが違うだけで、大まかな作りは初等部のものとさほど変わらない。ただ、首元で結ぶのはリボンではなくネクタイだ。前にやった手順を思い返しながら、もたもたと結んでみる。

「A、ネクタイって…………なんで結べてんの？」
「殿先輩がね、教えてくれたの」

　ハワ親。別にハワイで教えてもらったわけでも殿先輩がお父さんなわけでもないけれど。
　あと二年もすりゃこっちに制服変わるんだからって、先輩が翼先輩たちにネクタイの結び方指導してるとこに混ぜてもらったのだ。自分のネクタイなんて持ってなくて、練習はほとんどできてないから、今結んだものは下のほうの長さがおかしくなってる。ブレザーで隠れるから見逃してほしい。