開演ブザーは永遠に（３） (ページ37)

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穴を探したいという蜜柑ちゃんの気持ちはわかる。蛍ちゃんを助けたくて、委員長のアリスを取り返したい。それはよくわかるし、私も同じ気持ちだ。だが、もし穴を見つけたとして。学園を出て、Ｚを追いかけたとして――今度は、蜜柑ちゃんの身体に銃弾が撃ち込まれるかもしれないのに。
　気持ちとしては賛成寄りだが、その危険を考えると反対だ。自分の中に生まれる正反対の意見にぐらぐら揺れていたら、特力の扉が勢いよく開かれた。

「聞いたわよ、佐倉さん！」

　入ってきたのはスミレちゃんだった。野乃子ちゃんにアンナちゃん、キツネ目君にペンギーも一緒で、病院で別れた棗君すらもいた。
　例の会議はもう終わったんだろうか。病院を出てからまだ一時間経ったかどうかといったところなのに。もしかしたら、途中で抜け出してきたのかもしれない。棗君は流架君と二言三言、言葉を交わす。

「穴を探してＺを追跡するですって？あたしは反対よ！余計なことに手を出して、委員長と今井さんに続いてあんたまでどうにかなったらどーすんのよ！」

　正論の塊が蜜柑ちゃんを襲い、蜜柑ちゃんも負けじと反論する。

「でも、ウチ約束したんやもん！蛍と一緒に委員長のアリス取り返そうなって！特効薬が早よ見つからんと、蛍いつまでも苦しいままで……」
「だからってそれは学園の仕事でしょ！あたしたち生徒が勝手なことして状況がより悪くなったら――」

　スミレちゃんの言葉に、蜜柑ちゃんはまた、でもっ、と続ける。

「少しでも状況よくしたいんやもん。悪くするんじゃなくて、よくするために……。なにかウチにできること、もしあるならじっとなんかしてられへんやんか！」

　蜜柑ちゃんの声には、ひどく切実な響きがあった。

「あるかもしれへん可能性を、埋まったまんまにしときたくないんやもん……！」

　思わず息を呑む。
　――あるかもしれない可能性。
　私たちが動いても、どうにもならないかもしれない。でも、動かずにじっとしていて、委員長のアリスは元に戻らず退学になって、蛍ちゃんの特効薬は作り出せず、容態が悪化して、その身体が永遠に冷たくなるなんて――それは、それだけは、ダメだ。最悪の光景が浮かんで、ぞっと身震いがした。
　A、殿先輩が私の名前を呼び、なだめるように肩をさする。それでも浮かんでしまったものは消えない。ドクドクと心臓がいやに跳ねて、呼吸が浅くなる。