開演ブザーは永遠に（３） (ページ35)

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殿先輩はその噂について話す。
　なんでも大昔、高等部に時空の歪みを作れるアリスの人がいて、その歪みで出来た穴を通れば結界には引っかからずに出入りができるのだと。その穴とやらを呼び出す方法が書かれたノートが、今も高等部のどこかに眠っている……らしい。

「なに、その穴って」

　何人かが口を揃えて尋ねる。

「いや、だから。さっきから俺にもよくわかんねーって言ってんだろ」
「どうせガセだろ、うさんくせー」

　結構眉唾物な気がする。翼先輩は端から信じていない様子だ。

「んーまあ俺もそう思ってたんだけど」

　殿先輩は難しい顔つきで続ける。噂話を知っているのは一部の人間だけで、ガセにしてはひた隠しにされている節がある、と。

「だから、生徒の中でその穴の存在を知ってて、隠してる奴がいるんじゃねーかって」

　たしかに、そんな噂話ならアリス学園七不思議とかに入っていてもおかしくないのに、聞いたことがない。噂の流れやすい中等部に所属する翼先輩たちも初耳らしい。流布されていないがゆえに、ガセとしか思えない噂にじわじわと信憑性が伴いはじめた。
　でも、なんでその生徒(仮)は穴を隠してるんだろう。まだ使うとか……反対に、壊すとかのほうが行動としては正しい気がする。それか、こっそり使って外の世界に抜け出して、気づかれないうちに学園に戻ってたり？ ……できるのかな、そんなこと。

「も、もしっ、その穴から侵入者が入ってきたんやとしたら」

　おのおの穴についての話をしていると、期待混じりのうわずった声がした。

「出ていったのもその穴ってことで……それってウチらも、その穴使ってＺを追って外に出れるってこと！？」

　キラキラと目を輝かせる蜜柑ちゃんとは対照的に、やっちまったなって空気が流れた。