開演ブザーは永遠に（３） (ページ34)

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「……しかし、“Ｚ”かあー。子供にウイルス入り銃使うなんて何考えてんだ。能力盗みといい、なんなんだよあいつら」

　中等部の三人は、侵入者や、蛍ちゃんが撃たれてしまった事件はすでに知っていたものの、Ｚについては初耳のようだった。反対に、殿先輩は驚いた様子がない。外のお仕事もあるし、元から知っていたのかもしれない。それこそ、私たちがレオに誘拐される前から。
　特効薬についての話もしながら、もう一つ、どうしても引っかかることがある。もしかしたら殿先輩だったら知っているのでは、と思って尋ねてみる。

「ねー、先輩。昔、特力にアリスを盗む能力の人っていなかったっけ？」
「……いや、いないだろ」
「というか、盗むんなら特力じゃなくて危力系じゃないの？」
「……ん、そうだよね……」

　情報通な殿先輩や、昔っから特力にいる美咲先輩が否定するので、やっぱり私の気のせいだろう。そう言い聞かせてみても、なんだかちょっぴり変な感じがする。気を紛らわせるように、私のお腹のあたりで組まれた殿先輩の手に自分の手を重ねて弄る。

「だいたい、あいつらそもそもなんで学園に侵入できんだよ」

　翼先輩がぼやくように、学園は強い結界が張っていて侵入は脱出以上に困難だ。テレポートなどは当然弾くし、物理的に外壁を乗り越えて中に入るのも、電流が邪魔するからできない。

「殿、言ってたよな。学園はまだ奴らがどっから入ってどっから逃げたか見当もつかないって」
「ん？ああ……」

　みんなであれこれ侵入経路について言っていたら、私の頭に顎を乗せた殿先輩が歯切れの悪い返事をした。ため息のような、唸りのようなものを洩らしながら首を振り、長い黒髪が揺れる。

「先輩、どーしたの？」
「……んー、前に高等部で、一部の人間の間で噂があったんだよなー、と思って」
「噂？」