開演ブザーは永遠に（３） (ページ33)

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Ｚ編　噂　前-1 ページ33

のだっちには蜜柑ちゃんを初等部の寮まで送り届けるように言われていた。でも、本部を出て、ついた先は中等部の校舎。「あの……」ともの言いたげな委員長を殿先輩は適当にはぐらかして、そのまま歩き慣れた廊下を進む。特力の教室の、扉を開いた。

「みーかーんー……お前ってやつは、チビのくせになにムチャぶっかましてんだコラーッ！」

　教室の中には翼先輩や美咲先輩、メガネ先輩がいた。お怒りな様子の翼先輩が蜜柑ちゃんの頭を抱えてぐりぐりと拳をねじ込む。

「お父さんの言うこと聞かない奴はお仕置きだオラーッ！」
「翼が“お父さん”ってことは、俺は“お兄さん”かー」

　ふっと殿先輩が笑う。翼先輩がおとーさんで、殿先輩がおにーちゃん。年齢を考えたら反対な気がする。

「……殿おにーちゃん？」
「……そこは“明良”お兄ちゃんだろ」
「あ、そっか」

　そーだよねと頷きつつ椅子に座る先輩に両手を伸ばす。抱っこしてのポーズを取ると、向かい合わせの状態で膝に乗せてくれる。座面に靴底がつかないように、いわゆるあひる座りをしながら胸元に頬を当てたらぎゅっと抱きしめてくれた。あったかい、安心する。
　何秒かそうしたあとに膝の上でもたもたと身体の向きを変える。背中をぴったりと殿先輩に預ける安定の姿勢。なぜか流架君と委員長がぎょっとした目でこっちを見ていて、一緒に座る？って聞いてみたらブンブン頭を振られた。お膝に乗りたいわけじゃないのか。

「はい、Aも」
「ありがとー」

　湯気のたつティーカップを美咲先輩に渡される。ミルクとお砂糖たっぷりのミルクティーだ。初等部生五人で仲良くミルクティーを飲みながら、委員長がＢ組の教室に戻ってきた時に教えてくれた、“他人のアリスを盗む能力”やら、“Ｚ”の話を先輩たちとも共有する。