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緊急会議ってなんだろう。危険能力系を交えての会議に、棗君も出席する。今回の事件の侵入者を追うのに、初等部の棗君にまで参加要請がかかるのか。ついさっき、同じ初等部生の蛍ちゃんが撃たれたのに？
口の中が乾く。殿先輩の手がすぐ近くにあったので、手を繋ぎ、ぎゅっと握ったら同じだけの力で返されて、ほんの少し安心した。
「――みんなきて！ 蛍ちゃんが！」
蛍ちゃんの病室の窓にべたっと張りつく心読み君が、突然声をあげた。殿先輩の手を引いて窓辺に駆け寄る。固く閉ざされていた蛍ちゃんの目が開き、こっちを見ていた。顔色はまだ悪いけど、それでも幾分か血色が戻っている。
「蛍っ！」
「蛍ちゃん……！」
「“蜜柑に伝えて”」
心読み君の口を借りて、蛍ちゃんがなにかを伝えようとする。
「ほた――」
「“ブース。なんて面してんのよ、バーカ”」
蛍ちゃんは開口一番に悪態をついた。
「“――あんたに心配されるほど、私はヤワじゃないから”」
大きな傷を負っても、蛍ちゃんは蛍ちゃんだった。自分以上に蜜柑ちゃんを案じている。
「“大丈夫。泣くんじゃないわよ、蜜柑”」
◇
本部から出て、紅葉の散る大通りをみんなで歩く。
蜜柑ちゃんはさっきからずっと黙ってうつむいたままだ。足取りがだんだんと速くなり、私たちとの距離が離れる。
「さくら……佐倉っ」
流架君に名前を呼ばれて、ようやく蜜柑ちゃんは足を止めた。
「……蛍、今までウチの前でお父さんやお母さんのこと、ゆうたことなかった」
硬く、なにかをこらえる声。溜まっていたものをすべて吐き出す。肩が徐々に震えていく。
「ウチ……泣くな言われたばっかなのに……」
蜜柑ちゃんはへたり込んで、ぼろぼろと涙を流す。駆け寄って、頬を伝う涙を拭っても際限なく雫はあふれた。
「……お前もいつかあの子みたいに、強くなれる日がくるといいな……」
殿先輩の手が、蜜柑ちゃんの頭を撫でた。
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作者名：きざし | 作成日時：2020年12月30日 2時
