開演ブザーは永遠に（３） (ページ4)

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つい口ずさみたくなるような軽やかなテンポの曲が流れ、意識せずとも身体は自然に動く。メガネ先輩とおしゃべりしつつ、ステップを踏んで、くるっと回る。
　パートナーの相手はだいたい一分少々で変わる。列の並びとか振りつけが厳密に決まっているわけではなく、相手を変えずにずっと踊っている人たちだっている。そういう人は大抵うっとりと二人だけの世界に入り込んでいるので邪魔する人は馬に蹴られるやつ。
　踊るのに疲れたら列から出て、参加したくなれば空いている場所に入る。結構自由だ。
　翼先輩になんやかんや言われてたものの、メガネ先輩はダンスが終わってもどことなくそわそわしているだけで、別段ラストダンスに誘われることもなかった。
　そして、列に沿って場所移動。メガネ先輩と別れ、中等部や高等部の知らないお兄さんと踊る。お互いに名前は聞かない。学園祭楽しかったねと、ちょろっと話しをして、私が特力系だと知ると、おめでとうと祝ってくれる。
　迷路の攻略法を聞かれたりしたけど、そこは企業秘密。

　何回かペアを変えながら踊り、次のお相手は流架君だった。肩にはいつもどおり真っ白なウサギさんが乗っている。昼間、野ウサギになっていたせいか妙に親近感が湧いてくる。流架君に、ではなくウサギさんに、だ。

「……触る？」
「い、いいの？」

　器用に肩に乗るウサギさんをガン見していたら、流架君から神のような誘いを受けた。
　流架君が頷いて、肩に乗っていたウサギさんを腕に抱く。ゆっくりと伸ばした手が柔らかい毛に触れて、沈み込む。あたたかい。ひくひくと鼻が動いて、ヒゲも揺れる。おでこを撫でると、赤いくりくりの目が細くなった。

「かわい……」

　ダンスそっちのけでウサギさん触れ合い会になってしまった。でも後悔はしてない。もうちょっと触っていたいくらい。無限にもふもふできてしまう。
　あったかくて柔らかなウサギさんとの別れを惜しんでいたら、また今度触っていいからと流架君になだめられてしまった。恥ずかし……。