開演ブザーは永遠に（３） (ページ30)

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鳴海先生に連れられて病室を目指す。委員長に心読み君、流架君と棗君も一緒だ。初等部から本部の附属病院までの道中はやけに静かで、鳴海先生もどことなく怖い顔をしていた。

　迷路みたいに入り組んだ病院の中を、鳴海先生のあとについて進む。二、三分ほど歩いてから、一つの部屋の前で岬先生や警備の人たちと一緒に蜜柑ちゃんが立っているのが見えた。

「蜜柑ちゃん……！」

　普段、喜怒哀楽が激しくてころころと表情の変わる蜜柑ちゃんは、今は焦点の定まらない目を虚空へ向けていた。まさしく茫然自失といった有り様で、蛍ちゃんを――親友を撃たれた蜜柑ちゃんの様子は見ていられないものだった。

「……ほっぺた、汚れてるよ」

　ポケットからハンカチを出して頬を拭っても、軽く目線が振れただけで、私に目を向けることもない。
　蜜柑ちゃんが反応を示したのは、ストレッチャーに寝かされた蛍ちゃんが手術室から出てきた時だった。目を覚まさない蛍ちゃんに縋りつこうとして、周囲に止められる。
　蛍ちゃんはそのまま別の部屋へと運ばれ、手術室からはお医者さんと、蛍ちゃんのお兄さんである今井先輩が出てきた。
　鳴海先生や神野先生、岬先生は話があるとかでお医者さんに呼ばれてどこかへ行く。私たちはほんのわずかな時間ではあるが、蛍ちゃんとの面会が認められ、今井先輩と一緒に蛍ちゃんの部屋に向かった。

　白くて無機質な個室に、ピッ、ピッ、と心電図の音が響く。用途のわからない、見たこともない機械がたくさん置いてあり、それらに囲まれたベッドに蛍ちゃんが横たわっている。ベッドの横の椅子に座る今井先輩が絶えず癒しのアリスを発動する。
　元より色の白い蛍ちゃんは血の気が引き、いっそ青いほどだった。額に薄っすらと汗が滲む。か細い声で、両親を呼んだ。

　――私のアリスで蛍ちゃんを治せたら。

　無理だとわかっていても、どうしても頭をよぎってしまう。私のアリスは未熟で、不安定で、人に対しては使えない。自分のかすり傷一つ治せなかったのに、他人の時間を巻き戻すなんてできるはずがない。