開演ブザーは永遠に（３） (ページ26)

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「……今からナルを使って委員長の面会に行くんだけど。貴方も行く？」
「――行く！」

　鳴海先生の引率のもと、蜜柑ちゃんと蛍ちゃん、私の四人で本部へ向かう。
　鳴海先生の頭からアンテナみたいなものが生えているのも、蛍ちゃんが操縦機みたいなものを持っているのも、鳴海先生がロボットみたく不気味な動きをしてるのも、全部全部見ないふりだ。

「“Ｂ－１０５面会四名で”」

　幸いにも、誰にも見咎められずに本部の研究所に到着した。四人でぞろぞろと廊下を進み、“Ｂ－１０５”とプレートのかかった部屋へと向かう。鳴海先生が受付で受け取ったカードキーを差し込んで中に入った。

「三人とも……！どうしてここに……！」

　広さの割に物がほとんど置かれていない殺風景な部屋。こちら側と向こう側をガラス板が区切る。透明で、厚い板越しではあるものの、二日振りに委員長と対面する。

「ナルを説得して連れてきてもらったの」

　蛍ちゃんがしれっとした顔で言う。説得(物理)の気がしなくもないが、蛍ちゃんのお陰でここにくることができた。
「いいんちょー！」とガラスに駆け寄る蜜柑ちゃんに続くと、委員長の声が震えて、笑顔のまま、ポロポロと涙をこぼす。

「……僕、どうなっちゃうんだろうな……。みんなとこのまま会えなくなっちゃうのかなあ……？」

　大粒の涙が頬を滑り落ちる。その顔へと伸ばした手は、冷たいガラスに阻まれた。これでは委員長の涙を拭うことも、頭を撫でて慰めることもできない。

「委員長……」

　もっとたくさんお話しして、元気づけたいけど、蛍ちゃんの機械で鳴海先生を操れるのは三十分が限界だという。初等部から本部まではそれなりに距離がある。帰り時間も考えるとそろそろ切りあげないといけない。

「……みんな、きてくれてありがとう。すっごく嬉しかったよ」

　委員長は、まだ笑いながら泣いている。「またくるから」と蛍ちゃんの了承も得ずに言って、後ろ髪を引かれながらも研究所から立ち去る。
　アリスをなくしてしまった委員長はこれからどうなってしまうのだろう。学園は、アリスを持たない生徒をいつまでも在籍させるような場所ではない。
　まだアリスそのものの寿命が尽きたのであれば、お互いに納得のしようがあった。
　でも、今回は人為的に――誰かが、なにかしらの目的があって、委員長のアリスを勝手に奪った。そんなことが原因でお別れなんて、それだけは絶対に嫌だった。