開演ブザーは永遠に（３） (ページ23)

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「殿が帰ってくるなりこれだもんなー……」
「そいつが留守の間、誰が面倒見てやったと思ってんだか」
「翼先輩はゲームしたり遊んでただけじゃん……」
「遊んでやってんだよ」

　嘘だあ……。手加減一切抜きで私のキャラをバチボコにやっつけてくれたというのに。これなら美咲先輩とか、メガネ先輩のほうがよっぽど“遊んでやって”くれている。
　不満ありありな顔をしていれば、「なんだその顔」と翼先輩に軽くデコピンされてしまった。あうち。たいきゃくー！とばかりに後ろの殿先輩に顔を擦りつけると「よしよし」と弾かれたおでこを何度か撫でてくれた。へへへ。

「……なんでAはこんなに殿に懐いてんのかね。これのどこがいいんだか」
「殿にはべったべたに甘えるよな」

　今度はほっぺたをぐにー、とされた。しかも翼先輩だけでなく、美咲先輩にも。

「んやぁー」

　左右から好きなようにつままれて、痛くはなくともくすぐったい。私の顔は餅でもスライムでもないのだからおもちゃにしないでほしい。

「そこは年の功ってもんだろ。なんせ俺は代表だからな。中坊とは踏んだ場数が違えんだよ」
「だったらのだっちが一番頼られるはずだろうが」
「まー、あたしらものだっちに頼り甲斐感じてるわけじゃないけどさ」

　ついでのようにサラッとのだっちがディスられた。本人が聞いたら泣いちゃいそう。一応教室を見渡してみる。のだっちの姿は見当たらない。よかった。

「ったく、なんでよりにもよってこのおっさんなんだか」
「おいコラ、誰がおっさんだクソガキ」

　殿先輩が翼先輩のほっぺたをギリギリとつまみ、翼先輩も負けじと殿先輩の頬をひねる。頭上でドンパチ始まってしまった。それでも膝からおりようとは思わない。
　翼先輩はなんでと言うけれど、自分でも理由はよくわからない。なんとなく、殿先輩とはしっくりくるというか、ぴったりくるというか、安心するというか、安定するというか。
　いわゆる相性がいいとかそういうやつだろう。スピリチュアルやね。