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 あの棗君のパートナーだからか、蜜柑ちゃんは結構有名人らしい。一緒に歩いていると中等部の人がチラチラ見てきたりもする。リンゴだのモモだのレモンだの、さらには“星なし”と囁かれているところを見ると、情報はあんまり正しく流布されていないようだ。
 殿先輩はじっと蜜柑ちゃんを見て、それからふっとため息を落とす。

「そっか、棗の……ってことはお手つきかぁ……」
「おてつき?」

 カルタの?

「Aは大丈夫か? 変な野郎に近づいたらダメだかんなー」
「……不審者とか?」
「不審者だけじゃなくて。例えばそこのメガネとか」
「なんで俺を名指しするんだよ……!?」

 突然名前を挙げられたメガネ先輩がびくりと震える。メガネ先輩は不審者枠なの……?

「お前ら二人とも似たようなもんだろうが」
「翼、俺をこんなモテないやつと一緒にすんな。あ、チビちゃんこっちおいで」

 さっき美咲先輩に回収されていった蜜柑ちゃんが手招かれて、近くにくる。殿先輩の横に座った蜜柑ちゃんと、膝に座る私の頭を撫でて先輩は笑う。

「あと三、四年したら、俺と今よりずーっと仲よしになろうな」

 蜜柑ちゃんは頭にはてなマークを浮かべたまま、いいよ、と頷く。でも――

「ねー、なんでそんなに待たなきゃダメなの? 今すぐ仲よしになるのじゃダメなの?」

 三年も待ってたら先輩は卒業しちゃう。会えなくなってしまうのに、どうやって仲良しになるんだろう。

「今すぐだと風評被害ヤバそうだからなー。せめて中等部あがってから……」
「どっちにしろアウトだっつーの……!」

 私たちが座るソファの後ろで翼先輩が馬鹿でかいトンカチを振りあげて、のだっちが必死に止めている。それ頭かち割れちゃうやつ……。

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作者名:きざし | 作成日時:2020年12月30日 2時

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