開演ブザーは永遠に（３） (ページ19)

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蜜柑ちゃんがぽかんと小さく口を開けてこちらを見る。
　そういえば、二人はこれが初対面だ。蜜柑ちゃんには早く特力のメンバーをフルコンプしてもらわないと。

「殿先輩だよ。特力のね、代表なの！先輩、こっちは蜜柑ちゃん。Ｂ組で私と同い年。最近入ってきた子なの」

　先輩に抱っこされたまま軽く紹介をする。ほかのクラスの代表はそれほど外の仕事もしていないのか、だいたい学内にいる。対して殿先輩はお仕事をたくさんしているので、蜜柑ちゃんが入学してから一度もここに帰ってきてない。もしかしたら蜜柑ちゃんは、特力に代表がいるのすら知らなかったかもしれない。

「新入りか、よろしくなー。よっと」

　先輩はソファに座って、片方の膝に私を、もう片方には蜜柑ちゃんを乗せる。
　その体勢のまま、蜜柑ちゃんのアイデアにより、学園祭で特力が特別賞を貰った話なんかをしていたら、翼先輩たちが教室に入ってきた。殿先輩を見た瞬間に顔を思いきり歪める。

「――今すぐそいつから離れろ蜜柑」

　対象が蜜柑ちゃんだけなのは私には言っても仕方ないとわかっているからだ。殿先輩の膝の上はもはや私の定位置となっている。セーブ地点並みに落ちつくし、リスポーン地点として設定しておきたいくらい。

「おや……皆さんおそろいで」
「お、のだっち」
「あっ、のだっちやー！」

　再び教室の扉が開いて、今度は珍しくのだっちが入ってくる。そのままいそいそと簡易キッチンへと向かい、人数分のお茶を淹れてきてくれた。
　湯気の立つ湯呑みを両手で持って、殿先輩のお膝に座ったまま飲む。渋みが少なくて、ほんのりと甘い。のだっちの淹れてくれるお茶はおいしい。同じ茶葉を使って私が淹れても、なんか味が違うのだ。蒸らす時間だの、お湯の温度だのが違うのかもしれない。匠の技ってやつなのかな。

「そういや思い出したけど、チビちゃんの名前なんか聞いたことあると思ったら、棗のパートナーの“佐倉蜜柑”だったのか」