開演ブザーは永遠に（３） (ページ17)

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「わ、私立ってるよ？」
「いーから座ってろって」

　そう言われても落ちつかなくてモゾモゾする。端的にいうと恥ずかしい。あらあら～なんて微笑ましそうにお姉様方が見てくるのも照れ臭い。すぐに耐えきれなくなって、翼先輩の膝の上からひょいっとおりた。

「あ、くそっ……メガネ、何分だった？」
「あー、二分くらいだな」
「やっぱ特力とかの馴染んだ場所のほうがいいのかねー」

　な、なんの話だろうか……。美咲先輩も「お前ら下手だなー」って笑ってる。内容がまったく掴めないながらも、なんとなく知らないほうがいい気がした。

　それからすぐに、要先輩が「貰ったお花、花瓶に行けたいから」と、外の井戸で水を汲んでくると言って立ちあがった。「私たちがやるわよー」そうお姉様方が言っても、自分でやりたいからとやんわりと拒否する。
　とはいえ井戸は遠いし、水汲みは重労働だ。止める美咲先輩や、自分が行くと主張する翼先輩を要先輩は跳ね除ける。

「それでなくても水道やガスや電気がなくて、今皆に不便な思いさせてるし……。せめて僕、頑張って水汲んでくるよ。このお花も萎れさせたくないし……」

　おとぎ話の王子様を思わせる整った顔で、儚げに要先輩が笑った。

　――数分後。
　天然なのか計算なのかわからない要先輩の健気さ、的なものに突き動かされたお姉様方が、トンカントンカン小屋の中の工事を始める。
　電気もなくて、水道もなくて、ガスもなかった小屋が次々に改造されていく。なんということでしょう、みたいな声が聞こえた気がした。幻聴。
　これが人を動かす力ってやつ……？ＤＩＹの範囲を超えた大改築を見守っていたら、蛍ちゃんと目が合った。セントラルタウンのホールケーキ。仲よく十三等分される予定だったその半分が、いつの間にやら蛍ちゃんのお腹に収まっている。
　もくもくとケーキを食べていた蛍ちゃんは数秒固まり、残ったケーキに二回包丁を入れて、一ピースをお皿に乗せた。全体の八分の一だ。それを私に寄越してくる。

「……貴方も共犯よ」

　八分の一の共犯。こっそり食べたケーキは罪の味がしてとてもおいしかった。