開演ブザーは永遠に（３） (ページ14)

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それから試験までの数日間、蜜柑ちゃんのやる気に釣られたのか、試験前でも、ともすれば試験期間中であっても放課後にドッジボールをするヤンチャでロックな子も、試験勉強を始めていた。
　その子たちはためらいつつ、棗君にわからない場所を尋ねる。「お前ら脳みそ入ってんのか」などと毒を吐きながらも無視せずに教えてあげるあたり、なんだかんだ棗君は面倒見がいいようだ。

　クラス全体が勉強ムードに包まれながら、迎えた試験当日。一日目に国語、理科、算数、英語のほぼ五教科を持ってくる鬼畜な配分に慄きつつ試験を受ける。

　――国語のテスト。
　内容は、鳴海先生に愛の手紙を書くこと。
　毎度ながら鳴海先生の作るテストは学力を測れるとは思えない。授業中の小テストが多いから、そこで釣り合いを取っているんだろうか。
　“前期授業で習った漢字を５つ入れること”という条件から外れないように、使えそうな漢字を欄外に書き込み短い文章をいくつか考える。
　ええと、“優”しくて、“講義”がおもしろくて、“質”問にもていねいに答えてくれて……“責”任感……はあるのかな……？
　愛のお手紙な以上、ある程度の誇張や好意的解釈が必要だ。でも事実無根な内容は嘘臭すぎてちょっと書けない。
　悩みながら手紙を書いている最中、ふと後夜祭のことを思い出しかけて頭を振る。あの夜、私たちは偶然出会い、他愛ない(・・・・)話をして、ラストダンスの時間がきたから、踊った。――それだけだ。

　――理科のテスト。
　問題は普通。ただ、監視役として、以前岬先生の温室で見たあの丸っこいミニサボテンをつけられる。
　サボテンには個体差があり、私に配布されたサボテンは、監視なんて知ったっちゃねえ、とばかりに大の字で寝ている。職務怠慢。元よりカンニングする気なんてないにせよ、これはこれでなんか寂しい。

　――算数と英語のテスト。
　セリーナ先生が千里眼を使って見張り、神野先生が睨みを利かせる。カンニングしなきゃいいだけなのに、見張られている緊張感のせいで微妙に挙動不審になってしまう。圧迫面接ならぬ圧迫試験だ。

　二日目以降の試験も平常通り――槙原先生の代わりに、ヴィジュアル系バンドでデスボを響かせてそうな人が監督としてきた以外は、つつがなく終わった。
　鳴海先生もそうだけど、この学園、教師の服装が自由すぎやしないか。トップが軍服着てたりするからその辺ゆっるゆるなのかな。