開演ブザーは永遠に（３） (ページ13)

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そんなわけで、委員長と二人がかりで蜜柑ちゃんに勉強方法を教え込む。

「漢字はひたすら書き取って――」
「わからない英単語は全部単語帳に書き込んで――」
「年号は片っ端から語呂合わせで覚えちゃって――」
「とりあえず公式だけでも全部覚えて――」

　委員長と一緒にいろいろアドバイスした結果、蜜柑ちゃんはプスプスとショートしてしまった。ちょっと詰め込みすぎたかな……。復活を待つ間に自分の勉強を進めておこう。蜜柑ちゃんのお勉強を見ておきながら、自分は成績を落としました、ではとんだ笑い種だ。
　閉じたまま机に置いていた英語の教科書を開く。セリーナ先生のテストには、必ず一題は教科書の英文を使った問題が出される。内容をある程度暗記していたら点が取れる問題だ。
　教科書に載っている英文を一度日本語に訳して、それをさらに英訳する。自分の英訳と教科書とを見比べて答え合わせ。英訳できなかったところや、間違っていた英単語をチェック。
　……と、何ページか進んだところで、ぷつりと集中力が途切れた。蜜柑ちゃんを見てみれば、錆びついたブリキ人形のようにぎこちない動きで教科書を開き、ノートに漢字を書き写しているところだった。
　委員長は算数を、流架君は私と同じ英語の教科書を見ていて、その側にはいつも通り真っ白なウサギがいる。今日も今日とてもふもふだなあ。感慨深い思いで見ていると、目は口以上にものを言ったのか、流架君がおずおずと、膝に乗せてみるかと聞いてきた。

「い、いいんですか……！」
「う、うん、まあ……」

　ギュンとあがったテンションのまま返答してしまい、ちょっと引かれた反応された。もちつけ。ではなく落ちつけ。このままだと第二回ウサちゃん触れ合い会が中止になってしまう。
　席を移動して、ぐるりと机を回り、流架君の隣に座る。ウサギさんが流架君のお膝の上から私の膝へと移動する。バラバラに沈み込む四つの足がくすぐったい。
　丸っこい。かわいい。おとなしい。あったかい。足の裏までフッサフサだ。まんまるな尻尾もかわいい。ずっと猫派だったのにウサギ派に傾いてしまう。

「癒される……」

　アニマルセラピーってすごい。ＨＰもＭＰもぐんぐん回復する。常時この状態で授業を受けてる流架君が羨ましい。
　ウサギさんパワーを受け取って、集中力もやる気もアップした。