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「…………次、また同じようなことがあったら殿内君にチクっちゃおうかな」
「だ、だめ!」

 急に不穏なことを言われて慌てて顔をあげる。

「彼にバレるのは嫌なんだ?」
「……殿先輩、私が怪我するの嫌がるもん……」

 去年の誘拐事件のことも前にちょぴっと怒られたし、今回のことだってバレたら怒られるかもしれない。

「殿内君だけじゃない。Aちゃんが怪我をすると悲しむ人はたくさんいるよ。だから危ないことはしないで。自分のことを大切に。……ね?」
「ん、ぅ……気を、つける……」

 決してガンガンいこうぜを選んでいたわけではないけども。いのちだいじに。うん。

 こっくり頷くと鳴海先生の手が伸びて、頭は打ったばかりだからか、ほっぺたの方を撫でられる。手触りのよい生地が肌に触れた。
 なんだか鳴海先生ずっと手袋つけてるな。そういうオシャレ? 縛りプレイ? 今年のトレンドなのかもしれない。
 ふにふにと弄られるままにしていると、鳴海先生はふう、と軽く息をついた。

「……どうしたの?」
「あー、いや……なんで殿内君なのかな、って」
「なんで……?」
「僕も結構頑張ってるんだけどなーって話」
「……?」

 頑張るってなにを? なにか競争してるの?
 ちんぷんかんぷんな私に鳴海先生は苦笑して手を伸ばす。そしてそのままそっと抱きあげた。

「ひゃわ」
「このまま寮まで運んであげましょう」
「ん、んぇぇ……」

 足にはなんの問題ないのに。それとなく抗議の声をあげてみるけどもあっさりスルーされる。ストレス与えるの、よくないですよ。
 とはいえ腕を振り払って脱出するわけにもいかず、これは鳴海先生なりの気遣いということにしておこう。

 今日も今日とてひらひらお洋服な鳴海先生はどこを持てばいいのかわからない。変なとこ引っ張ったらビリッていっちゃいそうだし。

「ぎゅって首のとこに抱きついてくれてもいいけど」
「しないよぅ……」

 恥ずかしくて、顔を肩のところに押し当てて縮こまる。早く寮につかないかなぁ。

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作者名:きざし | 作成日時:2020年9月23日 23時

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