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「なに? 蛍蜜柑ちゃん」
「ちょっと外行って探したいものがあるんですけど」
「だーかーらー、みんな離れ離れはダメって今……」
「Aベアがいないんです」
なん……だと……?
◇
「ベアーッ!」
「ベアー! どこいったーんー!?」
B組の生徒、もちろんシャッフル組も総出でベアの探索に当たる。被害を受けなかった子の何人かが捕獲へと向かったものの、結果は惨敗。中身がベアでも身体はAだから余裕だろ〜とか思ってたら見事に伸されてしまったらしい。なにそれ。
さらには中等部の不良っぽい方々も“私”ベアと肩が当たったとかでいちゃもんつけた挙句、返り討ちにあったのだとか。このまま被害が拡大すれば謝罪会見を開かないといけなくなる。私の人としての尊厳はどこへいってしまうのだろう。
「なんかベア……もしかして人間の身体が楽しくなって戻りたくなくなってる……?」
なかなかに恐ろしいことを鳴海先生が呟く。ぬいぐるみよりリーチあるじゃーん、殴りやすいじゃーん、便利じゃーんってこと? でもそれ私の身体なので返してください切実に。
「べ、ベアーッ! あんたおらんとウチがー……!!」
なぜかベア蜜柑ちゃんも大層お焦りの様子で、「ベアのアホー! バカー!」という言葉がポンポン飛ぶ。
そして、「こうなったら待ち合わせ場所を決めて、みんな四方に別れてベアを探しましょう!」という鳴海先生の号令のもと、それぞれ初等部寮、セントラルタウン、高等部やベアの小屋へと散らばり、私は棗君委員長、スミレちゃん心読み君と一緒に中等部エリアを探すことになった。ただ、スミレちゃん心読み君は“私はバカでいじわるです”という看板を首から下げていてどうみてもベアを探している様子ではない。
故に、主な探索係は私と棗君委員長の二人だ。学園のど真ん中を走る大通りを南下して、とりあえずは中等部校舎を目指す。
「ベアー!」
「ベアー! 出ておいでー!」
二人で呼びかけていると、微かではあるが、ぜいぜいと喉を鳴らす音が聞こえた。
「なつ……い、委員長? 大丈夫……?」
「あ……う、うん……」
なんとなく顔色が悪い。シャッフルの副作用とかだろうか。棗君委員長だけ教室で休ませたほうがいいかもしれない。そう提案しようとした瞬間、棗君委員長が「あっ」と、明らかになにかを発見した顔になる。
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作者名:きざし | 作成日時:2020年9月23日 23時