2 ページ35
『以上、白組のパフォーマンスでした。次は赤組どうぞー!』
ドン、ドン、ドンと重たく響く太鼓の音に合わせて学ランを着込んだみんなで演舞を披露する。そのうち、色のついた雨がポツポツ降り始めた。ピンク色の雨は絶え間なく降り注ぎ、白組の人たちの体操服を赤に染めあげる。
続いて、風のアリスでぶわりと学ランが取っ払られ、みんながそれぞれ中に着ていた蝶々や蜂、チアの衣装が露わになる。
同時に花火が上がり、幻覚で生み出した花が空から降り注いで、身体が上に持ちあがった。ぐんぐんとどこまでも高く上昇する。
右手には蜜柑ちゃんが、左手には委員長が。他にもよーちゃんとか心読み君とか、赤組の初等部生があらかた空に浮いている。念力や遠隔操作のアリスの人が一人一人を持ちあげてくれているのだ。ちなみに、私の担当は持ち上げ君だったり。潜在系の持ち上げ君は棗君と別の組になってしまったのを大いに嘆いていた、なんてことは完全に余談だ。
宙に浮いた全員で手を繋いで輪を作り、幻覚の花びらが地面に積もって“紅勝利”と文字を象る。地面も、白組の服も赤色で、グラウンドは赤一色だ。観客の歓声がいっそう強くなる。白組の時と同じくらいの盛りあがり。これなら逆転勝利できるかもしれない。
このまま体勢をしばらくキープしてから――と、右手が突然重たくなった。
「――え」
私と同じ高さに浮いているはずの蜜柑ちゃんが、念力の効果が切れたようにがくんと落ちかかっている。唯一手を繋いでいた私に蜜柑ちゃんの体重がかかり、周りより数メートル下へと落ち込む。
蜜柑ちゃん担当の念力者の集中力が途切れた? でも、こんなこと練習の時だって一度もなかったのに。
「な、なに、これ……!?」
「っ、蜜柑ちゃん、手! 両手で掴んで!!」
今、この手を離してしまえば蜜柑ちゃんを空中に繋ぎ止めるものはなくなる。それはつまり、十メートル近く離れた地上に落下することを意味している。
手汗で滑りそうになる手首を固く掴み、左手でも蜜柑ちゃんを掴もうとしたのに、左腕が誰かに掴まれているかのようにピクリとも動かない。それだけではない。右手にすらもどこからか力がこもる。なにかが無理矢理に私の腕を引き剥がそうとしている。
その力に抗って、抗って、抗い続けて――ごきん、と嫌な音がした。
関節がもう一つ増えてしまったみたいに腕がおかしな方向を向き、指先に力が入らなくなる。互いの爪が互いの皮膚をひっかいて、手が、離れてしまった。
51人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きざし | 作成日時:2020年9月23日 23時