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蜂を模したメカを装着した蛍ちゃん筆頭に、ツタを潜り抜けた選手は神野先生、殿先輩、山之内先輩、白組のお兄さんに美咲先輩と続いて、次のトラップ――“コスプレ回転ドア”の前に辿りつく。
その名のとおり、回転ドアを押して潜ると、選手の服がなにかしらのコスプレへと変わるというトラップだ。メイドにチャイナ、警察官や軍服といった王道衣装から、プレゼントの詰まった袋も運ばなくてはいけないサンタさん、ろくに身動きも取れないぬりかべなんてものまであったりした。
完成度だけは妙に高い多種多様なコスプレが出てくるものだから、見ている側は無責任に盛りあがる人気のトラップだ。でも、強制お着替えをさせられる出場者はたまったものではない。
観客席はメイド！ メイド！ と妙に熱のこもった声援を送り続ける。紅組の応援席のどこかからはクールブルースカイ！！ って声が聞こえた。だいぶ昔に人気だった戦隊モノアニメのキャラクター、だったような。戦隊モノといいつつ出てくるのは美少女ばかりで、ニチアサごちゃ混ぜなイロモノアニメながらも逆にそれが大きいお友達にもウケて……。なんて脳内アニメ解説をしていると、特にためらうでもなく蛍ちゃんが回転ドアを押す。
ぐるりと中を半周して出てきた姿はというと、なぜかたらこの着ぐるみ。露出部位は顔のみ。蛍ちゃんのクールな無表情もあいまって異様にシュール。
来賓席に座る、スポンサーと思わしき人たちはハイテンションに札束を振っている。推しが息をしているだけでお金を払うタイプの人なのかもしれない。隣のメガネ先輩は「これはこれで……」と呟きながらシャッターを切る。好みの幅が広いな。
両手両足を完封された蛍ちゃんはぽてっ、ぽてっ、ぽてっとさっきの蜂メカをつけた時とは打って変わってのろのろと、実況曰く、“ケナゲ”にコースを進んでいく。コスプレくらいでは蛍ちゃんのマイペースは崩れないらしい。
ツタを通り抜けた順番からして、次は神野先生だ。まさか自分のコースでこのトラップにぶち当たるとは思ってなかったのか、はたまた存在を考えないようにしてたのか、凄まじい顔つきだった。『三十秒以上入るのをぐずるならば、通過権は次の走者に回され、そのまま順位ビリに落とされます』という脅しという名の後押しをきっかけに、固まっていた神野先生がゆっくりと回転ドアを押していく。
神野先生のコスプレ。女装とかきちゃったらどうしよう。ハゲタカの剥製がついた帽子に緑色のドレス、赤色のハンドバッグつきで出てこられたらしばらく算数の授業は内容に集中できなくなる。
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作者名：きざし | 作成日時：2020年9月23日 23時
