開演ブザーは永遠に（１０） (ページ21)

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体育祭　観戦-1 ページ21

あと少しで障害物競走が始まる。出場者のみんなと別れて、さっき翼先輩たちが座っていた応援席に向かうと、同じ場所にメガネ先輩が一人でいた。

「メガネ先輩、お隣いーい？」
「あ、Aちゃん！どうぞどうぞ！」

　通路となっている階段をおりて声をかけたら、メガネ先輩は横に置いていたパンフレットやら飲み物やらをサッと退けてくれる。それにお礼を言って席に座ると「ちゃんと観える？お膝座る？」とどことなく期待混じりに聞かれた。チャイルドシートとかがあるならまだしも、恥を忍んで膝に座るまででもないので、大丈夫だとお断りする。と、がっくりされてしまった。なんでこうも膝に乗せたがるんだろう……。

『――それでは、皆さまお待ちかねの障害物競走を始めます』

　近くに立つスピーカーからアナウンスが響き、選手が入場してわあっと大きな歓声があがる。白組のメンバーにはちらほら知らない人が混じっているけど、紅組の面々は全員知ってる人たちだった。

「……あー、あいつらが呼ばれたの次に出るためか……呼ばれなくてよかったぁ……」

　隣に座るメガネ先輩が小さくぼやいて胸を撫でおろす。さっきはフラれたなんて言っていたのに、その変わりようが面白くてちょっと笑ってしまった。

　観客席側は待ってましたとばかりにはしゃぎ、今年はどんなトラップが出てくるのかと期待しており、反対に選手のみなさんは戦々恐々というか、ちらほらと暗い顔が見えなくもない。
　紅組の第一走者は蜜柑ちゃん、のだっち、よーちゃん。白組は鳴海先生とスミレちゃん、そして中等部の知らないお兄さんだ。それぞれ白線の前でスタートの体勢を取る。

『第一走者、位置について……よーい、スタート！』

　空砲が鳴り響き、六人の第一走者が一斉に走り出す。

　障害物競走は前半競技の目玉なだけあって、それまでの競技とは一線を画して派手、というか危険だ。私のお口を荒らしに荒らしてくれたパン食い競争がマシに思えるくらいには。
　第一コーナー初っ端の自在に伸び縮みするハードルはまだ優しいけど、その次の玉乗りとか、第二コーナーのツタトラップだとか。……特にツタトラップは岬先生の認識を改めるきっかけになりそうだったり。常識人常識人って思ってたけどやっぱりアリス学園の先生だったんだなぁ……。