体育祭 パン食い競争-1 ページ16
校庭に設置された二つのボードに紅と白、それぞれの点数が書かれている。現在は白組が優勢で、紅組との差は約二十点少々。
前半の競技は百メートル走とか綱引きとか、体質系のアリスが活躍するものばかりだから、どうしても紅組は不利になる。だからこそ、この競技でちょっとでも差を縮めたいところなんだけど……
「……なんか、ちょっとドキドキするね」
ゴールテープから数十メートルくらい前のところに二対の竿が立てられ、その間にピンとロープが張られる。係の人がそのロープに一つ一つパンをつるしていくのを見ながら、待機列で一緒に並ぶ委員長にこそっと話しかける。
「そうだね……。足が早くなるパンとかが当たったらいいんだけど……」
「その前にAちゃんはパンに届くかどうかだよねぇ」
同じく出場者である心読み君が会話に加わる。これから競技に出る緊張感なんてかけらもなくて、それどころか余計なことまで突いてくる。
「……つるしてる紐にアリス使うから大丈夫だもん」
あんまり運動神経がよろしくない私は自然と運絡みの競技へ割り振られる。次のパン食い競争が終われば、あと出場するのは借り物競走くらいだから出し惜しみせずに好きにアリスを使えって殿先輩に言われたし。
「おー、自分の実力を思い知ったんだね。えらいえらい」
「な、撫でないで……!」
よーしよしよしと頭をぐしゃぐしゃにされてしまった。めちゃくちゃバカにされてる。ズレてしまった赤いハチマキを巻きなおしながら口を尖らせる。
なんか心読み君、どんどん遠慮がなくなってってるな。
「別に最初から遠慮とかしてないけどね」
「それはそれでどうなの……」
委員長に仲裁に入られながらやんややんやと言い合いもどきをしていると、パン食い競争を始める旨の放送が入り、係の人にスタート地点に並ぶように言われた。
「転ばないでね、Aちゃん」
「転ばないってば」
「あはは……でも、うん、気をつけてほしいな」
「委員長まで……!」
白線のところに並ぶと両隣から言われてしまった。ここで転んでしまっては恥さらしもいいところだ。改めて靴紐を確認しておく。うん、ちゃんと結んでる。緩んでない。大丈夫。
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作者名:きざし | 作成日時:2020年9月23日 23時