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殿先輩と一緒に初等部寮へ入るや否や、エントランスでたくさんの子に囲まれた。私が記憶喪失になっていた事実は思った以上に知れ渡っていた。自分は覚えているかと口々に尋ねられる。
友達が記憶喪失になってしまったなんて、わざわざ不安を煽ることを蛍ちゃんや流架君が言うとは思えず、不思議に思っていたら心読み君がテヘペロと言わんばかりの顔をした。読んで、喋っちゃったのか……。
ここまで送ってくれた殿先輩はなにやらほかに用事があるらしく「翼たちにも連絡しといたから、飛んでくるはずだぞ」と言い残して、早々に帰ってしまう。ちょっと寂しい。でも、また会いにきてくれるんだって。借りた服も返さないといけないし。楽しみに待っておこう。
そして、先輩の言葉どおり、さほど時間も経たないうちに翼先輩と美咲先輩が寮にきた。二人とも着の身着のままといった姿で、風にさんざん煽られたのか、髪だってボサボサだ。顔を合わせると、ちゃんと全部思い出したのか、から始まり、あれは覚えているか、これは覚えているか、いろんな思い出を挙げ連ねる。
「かくれんぼしてたら翼が掃除用具入れに隠れてはまって抜けられなくなったことは」「美咲が神野の補習をサボるためにアリス使ったら本体どころか分身までボイコットしたやつは」――覚えてます、ちゃんと。
あらかた思い出語りをしたところで、記憶については安心したのか、今度は外傷を気にし始める。かがみ込んだ翼先輩が、額を隠す前髪をさらりと掬った。
「怪我は？」
「治ったから、大丈夫」
だるだるな袖をめくり、なんの傷も、あざもない腕も見せる。
よかったよかったと表情を緩め、「心配したんだぞ」と乱れた前髪を手櫛で整えてくれる美咲先輩に対し、翼先輩はなぜか微妙に浮かない顔をしている。
「……ごめん」
「……？」
謝罪を向けられる意味がわからず、首を傾げる。翼先輩は眉をぐっと寄せて、うつむいた。
「俺も花姫殿に行ったのに、お前らに怪我させた。……Aも、蜜柑も、あと少しで死なせるところだった」
悔しさや、後悔が強くこめられた声だった。
下を向いた顔を覗き込むと、噛みしめられた唇が見えた。美咲先輩もそうだけど、目の周りがちょっとだけ赤い。指でそっと触れた目元は、熱を持っているように感じられた。
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きざし(プロフ) - ユイさん» 温かいお言葉ありがとうございます！再熱していただき嬉しい限りです…！これからもゆったりと更新をしていきますので、どうぞのんびりお付き合いいただければと思います。改めてコメントありがとうございました！ (2020年6月29日 19時) (
レス) id: d2df0bfcc2 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ(プロフ) - いつも更新お疲れ様です。この作品を読んで学アリ熱が再熱するくらいに楽しんで読ませてもらっています… 夢主ちゃんの存在、先生たちの関係が気になって気になって仕方ありません！大変だとは思いますが更新楽しみにしております。長文失礼しました。 (2020年6月29日 3時) (レス) id: f59a3694e1 (このIDを非表示/違反報告)
きざし(プロフ) - ユイカさん» コメントありがとうございます！これからもどんどん更新頑張りますので、どうぞゆるりとお待ちくださいませ〜！ (2020年6月15日 19時) (レス) id: d2df0bfcc2 (このIDを非表示/違反報告)
ユイカ(プロフ) - 初めて読んでみたんですけどとても面白くて気に入りました！更新楽しみにしてるので頑張ってください！ (2020年6月14日 20時) (レス) id: b470749ec2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きざし | 作成日時：2020年5月27日 22時
