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先生が亡くなった。
頭が真っ白に塗りつぶされたまま、口の中で呟く。秀一君はなにを言ってるんだろう。その言い方だと、本当に先生が死んでしまったみたいだ。
だって、“死ぬ”って、冷たくなって、動かなくなって、笑わなくなって、手を繋いでくれたり、頭を撫でてくれたり、膝に乗せてくれたり、私の名前も呼んでくれなくなるってことで――二度と、先生に会えない。
「――ッ！」
口を塞ぐ。そうでもしないと悲鳴をあげてしまいそうだった。
諸事情で転勤になった、もう学園に戻ることもない。そう言った秀一君の、あの顔。あれは死を悼む顔つきだった。先生の死を、悲しむ顔つきだった。
それじゃあ、先生は、本当に――
ぐらりと目眩がする。平衡感覚を失い、それでも音を立てないよう扉から離れる。廊下を進み、どうにか奥の部屋へと戻った。
後ろ手に扉を閉めたところで身体の力が抜けて、ずるずると床に座り込む。
知りたくない。知りたくなかった。先生が学園どころか、この世界のどこにもいないなんて。
いたい、つらい、くるしい、さみしい。
身体の奥底が冷える。寒くて、寒くて、凍え死んでしまいそう。ガチガチと歯の根が合わない。
「…………ち、が……ちがう……ちがう、ちがうちがうちがうちがう……！」
こんなに苦しいのは、こんなにも寒いのは嫌だ。こんなものが現実なんて認めたくない。
だから、これは悪い夢だ。自分に言い聞かせる。
だってこんなこと、あり得ない。
私が未来にきていて、そこには私の知らない“私”がいて、私の記憶はほかの人のもので、私の身体は誰かのもので、先生はもう死んでいるなんて。
そんなの、夢に決まっている。とてもとても悪い夢を見ているだけだから、早く目を覚まさないと。早く逃げ出さないと、こっちが現実になってしまう。
なにかの軸が振れてしまったみたいに世界が傾く。扉に背を当てていたのに、気がつくと床に倒れ込んでいた。夢のくせに肌に触れる床は冴え冴えと冷たくて、それがいっそう恐ろしい。
寒さから逃げるために縮こまり、両手を固く組み合わせる。神様にお祈りするみたいに。
早く起きなくちゃ、早くこの世界から抜け出さなくちゃ。先生が死んだなんて嘘だ。目が覚めたら先生がいて、柚香先輩がいて、ナル先輩も遊びにきてて、特力のみんなと、小さい昴君や秀一君と笑い合う日常が戻ってくるに違いない。怖い夢はこれで終わり。
ぜんぶ、ぜんぶわすれるんだ。
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きざし(プロフ) - ユイさん» 温かいお言葉ありがとうございます！再熱していただき嬉しい限りです…！これからもゆったりと更新をしていきますので、どうぞのんびりお付き合いいただければと思います。改めてコメントありがとうございました！ (2020年6月29日 19時) (
レス) id: d2df0bfcc2 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ(プロフ) - いつも更新お疲れ様です。この作品を読んで学アリ熱が再熱するくらいに楽しんで読ませてもらっています… 夢主ちゃんの存在、先生たちの関係が気になって気になって仕方ありません！大変だとは思いますが更新楽しみにしております。長文失礼しました。 (2020年6月29日 3時) (レス) id: f59a3694e1 (このIDを非表示/違反報告)
きざし(プロフ) - ユイカさん» コメントありがとうございます！これからもどんどん更新頑張りますので、どうぞゆるりとお待ちくださいませ〜！ (2020年6月15日 19時) (レス) id: d2df0bfcc2 (このIDを非表示/違反報告)
ユイカ(プロフ) - 初めて読んでみたんですけどとても面白くて気に入りました！更新楽しみにしてるので頑張ってください！ (2020年6月14日 20時) (レス) id: b470749ec2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きざし | 作成日時：2020年5月27日 22時
