開演ブザーは永遠に（１） (ページ9)

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期待に満ちた声にプレッシャーを感じる。入学してきた子は、私のアリスを聞くとこういう反応をしがちだ。時間を巻き戻してエブリディ日曜日とか期待されたりする。でも、そんなすごいこと、私にはできない。

「名前だけ聞くと、すごそうなんだけど……壊れたおもちゃとか、割れたコップを直したりだとか、冷めちゃった飲み物を温めるとか、できるのはちょっとしたことだけで……」
「えー！そんなんできんの！？ならいつでも出来立てのご飯食べれるん？いーなー！」

　ウチが壊したじーちゃんのＤＶＤもAに戻してほしかったわー。キラッキラの、それこそ魔法使いでも見る目をされて、顔が熱くなってくる。

「い、委員長のアリスもね、すごいんだよ！大人にも負けないくらいのリアルな幻覚を作り出せるんだから」

　蜜柑ちゃんからのベタ褒めに、嬉しさを通り越して気恥ずかしさが湧いてしまい、委員長へ勝手に話を流す。ほっぺが熱い。口もにやけてる気がする。隠すように両手で頬を押さえて、熱が冷めるのを待つ。

　そ、そんな僕なんて。いやいや委員長トリプルじゃん。えっトリプルってなにー？などなど、後ろの三人でちょっと盛りあがっていると、操縦席に座る蛍ちゃんが、ばっさりと蜜柑ちゃんの浅薄さを切り捨てた。だんだんと青ざめていく蜜柑ちゃんの顔。ぐう、と蛍ちゃんのお腹の虫が鳴いたのを合図に、「お詫びに食料調達行ってきます！」と叫んで駆けていった。
　蛍ちゃん、蜜柑ちゃんには厳しいんだ。
　入学当初ならまだしも、最近は波風立てないようにうまく対処している様子だったから、意外な反応。蜜柑ちゃんは蛍ちゃんを追っかけて学園に入学したというから、京都ではこんな感じだったのかも。なんだか面白いなー、って蛍ちゃんを見ていると眉をひそめられた。ジロジロ見てごめんなさい。鑑賞料とか取らないでください。

◇

　十数分後、蜜柑ちゃんが両手いっぱいに食料を抱えて帰ってきて、焚き火を囲んでみんなでそれを食べる。
　ぶどうに柿に、栗に、時季外れのものまでおいしい。北の森でキャンプするのも面白いかもしれない。もちろん、ベアをはじめとする危険生物がいなければ、の話だ。
　あいかわらず顔色悪く落ち込んでいた蜜柑ちゃんは、蛍ちゃんが二言三言言葉を投げかけたらケロリと持ちなおした。蛍ちゃん、飴と鞭の使い分けが妙にうまい。