開演ブザーは永遠に（１） (ページ39)

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誘拐　病院-1 ページ39

有名人が、学園にくるらしい。

　二十代前半という若さにして、世界的な人気を博すハリウッドスター、“レオ”。それはそれは輝かしい偉業を委員長たちが語ってくれたものの、正直、レオにはさほど興味は持ってない。ただ、みんなと一緒に騒ぐのが楽しくて、私も“生レオに会いにいくぞ数打ちゃ当たる”作戦のメンバーに入れてもらった。
　発案者である蛍ちゃんから渡されたのは、時計型カメラと、耳当ての部分がパンダになってるかわいい通信型イヤーマフ。それに、足が速くなるという筋肉活性湿布だった。一人につき脚は二本。なので配られる湿布も二枚。のはずが、なぜか私だけ微妙に信用に欠けるような顔で四枚配布された。ちょっと屈辱的。突っぱねることもできず、太ももとふくらはぎの両方にペタペタ貼った。よし。

　蛍ちゃんお手製のメカと足が速くなる湿布。十全ですわ、と言いたいくらい準備は万端だと思ったのに、警備は予想以上に厳しい。警備員や職員に捕まることなく、レオが検診を受けるらしい本部の病院までたどりついたのは、私と蜜柑ちゃん、蛍ちゃんの三人だけだった。必要な犠牲――だったかどうかはわからないが、捕まった人たちの冥福を祈ろう。
　病院は、東西二つの棟に分かれている。東棟のほうが手広いというので、私と蜜柑ちゃんの二人で東棟を、蛍ちゃんは西棟を探すことになった。
　とはいえ、蜜柑ちゃんと一緒に固まってレオを探しても効率が悪い。ちょっぴり不安ながらも、単独行動を取る。誰か一人でも生レオに会って、その姿か声を蛍ちゃんの機械に収められたら作戦は成功なのだから。
　ちょっと体調が悪そうに。でも、悪すぎるとなにか言われそうだから、ほどほどに。風邪を引いた普通の女の子ですよアピールをしながら病院内を歩き回る。なるべくお医者さんがいない道を選び、学園の職員らしき人を見かけたら隠れて……とそんなことをしているうちに、迷子になってしまった。そーいや本部の病院は迷いやすいって聞いたことある……。
　廊下を見渡せどもレオはもちろんのこと、病院内の案内図も見当たらない。一度蜜柑ちゃんと連絡を取り合おうとイヤーマフのスイッチに手を伸ばした瞬間、後ろから声をかけられた。

「そこの君、どこの病室の子？迷子かい？」

　白衣を着た若い男の人が中腰になって聞いてくる。言葉だけを聞くと親切そう。だけど、目には猜疑心が宿っている。これは疑われている、確実に。きっと学園から通達がきているのだ。というか本部であんなに騒いだのだから、きていないほうがおかしい。

「だ、だいじょぶ、です！」

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