開演ブザーは永遠に（１） (ページ35)

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「あ、あぇ……」

　勢いに圧倒されて変な声しか出ない。
　内容もあんまりちゃんと把握できたわけではないけども、どうやら特力クラスのやる気のなさに憤っている、らしい。そういえば、今回の学園祭が蜜柑ちゃんにとっては初の学校行事になる。一番最初の大型イベントなのに、ちょろっと展示して終了ではたしかに味気ない。
　にしてもちょっと前まで手紙が届かないと泣いてたのに復活が早い。やっぱりセロトニンなんちゃらのＬＬ型なんだろう。ポジティブなのはいいことです。

「……つってもなー。だいたい、ほかのクラスと違って、ウチは能力に共通点のないやつが集まったクラスだから、コレッ！ってウリがないしなー」

　未成年の必死の主張にも、どこか冷めた様子で翼先輩が答える。
　でも、実際のところそうなんですよね。ほかのクラスは“コレッ！”と、用途というか、向きがわかりやすいものの、なにせここは特別能力系。アリスの中でもちょっと変わったものが集まっているクラスだ。
　店を出すにしても、ステージにあがるにしても、能力が噛み合わない人が出てくるわけで。その人たちのアリスは活躍の場が設けられず、来場者も“アリス”を見にきてるんだから、いまいち盛りあがりに欠けることになる。
「頑張ってもどーせ一位取れるわけじゃないしな」「扱いづらい能力多いもんなー、うちは」「模擬店やってもくんのは冷やかしくらいだろ」などなど、教室にはあいかわらずだらけモードの人が多い。
　そんな中、ポジティブ蜜柑ちゃんはなにかを思いついた様子で私たちを手招きした。

「なあなあ、文化祭の出しもの、こんなんあかん！？」

　聞き耳を立てる人がいるでもないのに円陣を組んでコソコソと内緒話の形をとる。統一性も方向性もバラバラなアリスを逆手に取った模擬店。先輩たちも、私も、そして蜜柑ちゃんも。全員のアリスが等しく役に立つ。

「――すごい、すごい！楽しそう！」

　さっきまでの空気はなんだったのか、と突っ込まれそうなくらい教室が沸き立った。一転して全員がやる気をみなぎらせる。今年の学園祭は忙しくなりそうだ。