開演ブザーは永遠に（１） (ページ29)

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「あははっ！いちごパンツーっ！」
「お前のフォーム、パンツ丸見えー。おーい、みんなみろよー！投げるぞー！」
「な……っ！」

　うわあ、小学生男子の嫌なところ丸出しだあ……。こっちのチームはもちろん、向こうのチームの女の子も眉をひそめてるからやめたほうがいいよ……。

「……お前らパンツくらいで騒いでんじゃねーよ」
「そーやっ、そんなことぐらいで」
「この女はもうパンツの中、俺に見られてんだぞ。今更んなことで動揺すっかよ」

　ハッと吐き捨てるように棗君が言い、一面がざわつく。
　え……ど、どういう御関係で……？
　思わず視線を向けた蜜柑ちゃんの顔は真っ赤だった。例の、“ヘンタイちかん男”発言となにか繋がってるんだろうか……。

「っ、こんの……！うらぁああああ！」

　いろんな感情が入り混じった雄叫びとともに、豪速球が放たれる。ボールは野乃子ちゃんの時と同じく、再び妙な軌道を描いた。棗君チームのメンバーに当たる直前にギュンと曲がり、誰にも触れずにこっちのコートへとＵターンする。そして、ボールはタマヘルを外した蛍ちゃんの顔面に見事にめり込んで……

　――なんで女子の制服を着てるんだろう。
　
　絶対零度の空気に包まれる中、ほんの一瞬そう思った。

　蛍ちゃんが棄権して、見学席へと移ってからも試合は白熱した。
　途中で外野入りした私は、線の外に転がってきたボールを蜜柑ちゃんたちに届くよう思いっきり投げるだけだったけど。……届かないこともあったけど。
　棗君チームも外野と内野が入れ替わり立ち替わり、メンバーが変わる。
　最後は勝敗が決まる前にチャイムが鳴り、引き分けとなったものの、たっぷり身体を動かしたので爽快感があった。

「楽しかったなー、A！」
「うん、そうだね！」

　最初から最後まで内野で活躍していた蜜柑ちゃんはたくさん汗をかいたらしく、ハンカチで顔を拭いながら笑いかけてくる。
　私も蜜柑ちゃんに笑顔を返しながら、試合が終わっても蜜柑ちゃんがここにいることに、なぜかほっとしていた。よかった、脱走してない、なんて、おかしなことを思ってしまう。
　そもそもドッジボールの試合を持ちかけてきたのは蜜柑ちゃんなのだから、脱走なんてするはずないのに。