開演ブザーは永遠に（１） (ページ24)

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それからすぐに、寮母ロボットのタカハシさんが焼き立てのクッキーをお皿に入れて持ってきてくれた。星なしは一枚、シングルは二枚、ダブルは三枚、トリプルは四枚……と、貰える数も星階級で決められている。みんなそちらへ夢中になり、私はというと、ずっと寝ていたせいで空腹を感じなかった。夕食まで部屋にこもっていよう。
　踵を返しかけた瞬間、蛍ちゃんがじっとこちらを見ていることに気づいた。互いの視線がかち合う。無表情のまま、蛍ちゃんは口を開いた。

「……これは、単なる興味だけど。……Aさんの言っていた先生って誰なの？」

　――漏洩が判明したら降格処分とする。無論、話を聞いた者もだ。

「し、知らない」

　自分で言っておきながら、妙に痛む胸があった。知らない、知らない。いや、たしかに知らないのだけど、もっと別の言い方があっただろうに。Ａ組の子でもこいつ嘘ついてんなってバレちゃいそうな、お粗末すぎるごまかし方だった。

「……そう」

　回避クリア？というか、見逃していただいた？
　あっさりと頷きを返し、さっきと同じ声で「クッキー、いらないなら貴方の分も貰ってもいいかしら」と続けた。狐につままれた気分でどうぞどうぞとコクコク首を縦に振ると、蛍ちゃんもタカハシさんにクッキーを貰いにいく。自分の分と私が譲った分に加え、蜜柑ちゃんが大事そうに受け取ったクッキーを横からかすめたり、儚げな外見に反して強かだ。

　トン、トン、トンと、自分の足音だけが階段に響く。ほとんどの人が談話室へ行っているらしく、誰ともすれ違わない。廊下にも人はいない。と思いきや、私の部屋の前に誰かが――スミレちゃんが、ムスッとした顔で立っていた。
　部屋の表札を見る。ローマ字で書かれた自分の名前と、その下にある二つの星。部屋を間違えているわけではない。私も、そして自惚れでなければスミレちゃんも。