開演ブザーは永遠に（１） (ページ15)

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空気が乾燥する。吸い込んだ空気が喉を焦がして噎せる。熱くて、熱くて、服のどこかに火がついていないか、委員長が燃えてしまわないか不安になる。火事の時はしゃがめと教えられたけど、目の前に火がある時の対処法は知らない。へたり込み、身を縮こませて祈ることしかできない。

「火ぃ止めろ！バカ！」

　炎の壁の向こうから蜜柑ちゃんの怒鳴り声が聞こえた。危ないと、誰かが言って――真っ白な光が弾けた。赤い揺らめきをすり抜けて、光が降り注ぐ。目を焼かんばかりの強い輝きが目眩を引き起こし、耐えきれずに片手で顔を覆う。肌を焼く熱さが、和らいだ気がした。
　何秒ほど経った頃か、目蓋の向こうの輝きが消えて、かざした手をそろそろとおろす。あれだけの勢いがあった炎は、もう完全に消えていた。地面についた黒い跡や、焦げた草の匂いがなければ今しがたの出来事はすべて幻覚と言われても信じてしまいそう。
　蜜柑ちゃんは、棗君はどうなったのかと思えば、いつからそこにいたのか、鳴海先生が棗君を抱えていた。棗君の顔は茹だったように赤く、意識もない。これはいつものフェロモンで止めてくれたのだろうか。

「蜜柑ちゃん、仮入学試験合格おめでとう♡ 素敵なアリスを持ってるね♡」

　蜜柑ちゃんの頭に手を置いて、鳴海先生が優しく微笑む。
　さっきの光は鳴海先生ではなく、蜜柑ちゃんのアリスだったようだ。自分のことで手一杯で、なにが起きたのかわかってなかったけど、鳴海先生の説明では、蜜柑ちゃんのアリスが棗君のアリスを打ち消したらしい。なにそれすごい。

「……あ、あの、Aちゃん……」
「え、あ……！」

　腕の中でもぞもぞと声がした。委員長の頭を抱えたままだった。

「委員長、燃えてない？焼けてない？焦げてない？」
「だ、大丈夫……！」

　委員長の周りをぐるっと回る。うん、どこも火がついてない。制服も無事だ。こんがり委員長になってなくてホッとした。委員長に２Ｐカラーは求めてない。