開演ブザーは永遠に（１） (ページ12)

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蜜柑ちゃんも同じようなことを考えているのかいまいち表情が浮かばない。そんな中、蛍ちゃんが一つの案を出した。四人で顔を突き合わせて作戦内容を共有する。

「うーん……ちょっと気が引けるというか……」
「なら、私の麻酔入り吹き矢で――」
「流架君を呼ぼう！」

　半ば強制的に満場一致する。ごめんなさい、流架君。でも、わけを話したら許してくれる。そう信じ込みたい。

◇

　――ルカがなかまにくわわった！

　例の曲が頭で鳴った気がした。レベルアップのよりメジャーではない曲。向こうは仲間とは思っていないだろうから、かっこかり、が最後につく。
　初っ端に申しあげたとおり、無事にというべきか、見事にというべきか。委員長の幻覚に釣られて、落とし穴に落ちた流架君はあっという間に捕獲された。ぐるぐると腕を縄で縛られた状態では仲間どころか捕虜に近い。

「というわけで、行く手を遮るあのヒヨコをなんとかしてほしいねん」

　たいした説明もせずに早速頼む蜜柑ちゃん。に、対して、流架君が「さわるなブス」と、どこか言いなれない様子で言い放つ。怒った蜜柑ちゃんが流架君の前髪を引っ掴んだり、いささか揉めたものの、蛍ちゃんが吹き矢をちらつかせるとやる気になってくれた。某ハンバーガーチェーン店理論。暴力はすべてを解決……いや、ダメだ。暴力反対。非暴力不服従ってのだっちの尊敬するガンジーさんが言っている。
　縄を解かれた流架君は、見るなよ！絶対に見るなよ！と、それこそ前振りみたく固く約束させてからヒヨコに近づいた。当の私たちは、つまり見ろってことですね、ってな具合に、茂みに身を潜ませて覗き見中だ。

「あっ、あいつヒヨコと会うで」

　緊張と好奇心を滲ませる声とともに、流架君とヒヨコが出会う。いっけなーい！遅刻遅刻！って食パンを咥えているわけでも、曲がり角があるわけでも、どっちかが転校生なわけでも、なんちゃらの夜のごとく片方が尻もちをついてもう片方を見あげているわけでもないものの、それはそれは運命的な出会いに見えた。ヒヨコの巨躯に流架君の身体が埋まる。十数メートルという身長差を感じさせないアグレッシブな触れ合いだった。

　きらきらと揺れる金色の毛が、二つ。そうして戯れ続けて約十分後。中等部のお兄さんがヒヨコを探しにきて、流架君とヒヨコの逢瀬は儚くも終わりを迎えた。